God save the Kingを歌う王妃、歌わない国王
エリザベス女王の国葬が終わった。民衆が女王とお別れをする「公開安置」(聖堂や寺院に安置された女王の棺のすぐ近くで追悼すること)の日数が多く、埋葬されるまでの期間が長かった。
国内のさまざまな場所で行われた葬列の行進や棺の警護などを、チャールズ国王夫妻だけでなく、女王の他の3人の子供達や孫達が担った。ロイヤルメンバーは心身ともにタフな時期を送っただろう。
その中で疲れを見せない体育会系ロイヤルメンバー2人が、一層の存在感を放った。一人はカミラ妃、そしてもう一人は……。
女王の崩御から国葬までの一連の追悼行事は「ロンドンブリッジ作戦」というコードネームで、1960年代から用意周到に計画されたもの。全てが完璧に行われた後、棺はウインザー城の聖ジョージ礼拝堂に運ばれて埋葬された。王室のために作られたこの礼拝堂には、父ジョージ6世、母のエリザベス皇太后、妹のマーガレット王女、そして最愛の夫フィリップ王配が眠っている。先に天に召された家族が女王を温かく迎えているだろう。
国葬が始まる前に鳴らされた追悼の鐘の回数は、女王の年齢と同じ96回。会場となったウエストミンスター寺院は、女王の結婚式や戴冠式が行われた場所であり、彼女の幸福や栄光の日々を刻んだ特別な場所だ。
BBCによると、棺の上にアレンジされた花はチャールズ国王が選んだもので、ローズマリー、イングリッシュオーク、マートルが使われた。マートルは女王の結婚式のブーケに使われていたものから育てたものだという。アレンジのそばに置かれたチャールズ(以下、敬称略)が書いたメッセージカードには「愛と献身の記憶に」と記されているそうだ。
葬儀の間に歌われた賛美歌はやはり結婚式や戴冠式に流れたもので、女王自らが選曲したものも含まれる。そして式の終わりに女王専属バグパイププレイヤーが奏でたのは「Sleep, dearie, sleep」(愛しい人よ、眠りなさい)。バグパイプのなんともいえない哀愁を帯びたメロディが、女王が永遠の眠りについたことを改めて実感させた。
National Anthem(賛歌)は「God save the Queen」から「God save the King」に変わった。王妃となったカミラは歌っていたが、チャールズは歌わず、悲しげな眼差しで母が横たわる棺を見つめていた。彼の胸に去来するものは何だったのだろう?