王室不要論が再燃か?!
30歳以下の若い世代をはじめ、国民の一部の人々によって支持されている「王室不要論」が、偉大な女王の死によって拡大する可能性があるからだ。
「血税を使って王室メンバーが贅沢するのは許せないとか、アンドリュー王子のセックススキャンダルやハリー王子とメーガン妃の王室離脱など揉め事だらけでけしからんとか、そういった感情的な理由がメインになった王室不要論は本質的な問題ではありません。王室はイギリスの“安定”のために必要だということを、ちゃんと理解している人が少ない気がします」(塩田さん)
実際に、王政を廃止して君主がいなくなったら、国家元首を誰が担うのか、新しい元首を中心とした代替システムをどうやって構築するのか。このプロセスは容易なことではない。さらには軍隊など君主の名のもとに編成されている国家の機関がとても多い。こちらの君主なき後の新しいシステムへの移行にも時間がかかるのは必至で、相当の混乱を招くに違いない。
また、現時点で56カ国が加盟し、世界の人口の3分の1を占めるという英連邦諸国との経済同盟も重要だ。20世紀前半の宗主国と植民地という主従関係ではなく、物的人的両面での交流を目的とした友好関係を築いている。
イギリスがEUから強気で離脱できたのも、これらの国々との緊密な関係性があるからだろう。特に人口が爆発的に増えているインドやアフリカ諸国のマーケットは、貿易面で特に重要だ。EUとは違い、イギリスが莫大な投資を行った結果、リターンも多く望める。
「英連邦の長はこれまでエリザベス女王でしたが、そのままチャールズ国王が引き継ぎました。また、オーストラリアやカナダなど一部の国はイギリスの君主を国家元首とした王国です。これらの関係性を持続させるためにも、王室は必要ではないでしょうか」(塩田さん)
ガイドに配られた紙にはロイヤルの公務がびっしり
SNS上で「短気な男」という不名誉なレッテルを貼られてしまったチャールズだが、今後の任務時にもそうした言動が見られるかもしれない。
なぜなら、ロイヤルメンバーの公務量が多いからだ。数えきれないほど膨大な数の慈善団体の長、大学の総長などを務めながら、イギリス全土の公共機関や学校のセレモニーにも出席する(もちろん報酬はなし)など、この面でも国への貢献度は高い。高位の王族がバックについていると、チャリティでの寄付金の集まり具合が全然違うそうだ。塩田さんには職業柄知り得た情報があった。
「私たち公認ガイドはお客様を観光スポットにご案内する場合、今ならネットを使っていろいろな情報を得ます。でもデジタルが普及する以前は、公式ガイド協会が発行する紙情報に頼っていたのです。それと一緒にロイヤルメンバーの公務の情報もカレンダー形式で配布されていました。なぜかというと、公務が行われている場所周辺の警戒態勢や交通規制を把握できるので、その時間を避けてスケジュールを組めるからです」
その紙にはロイヤルメンバーの公務予定がびっしりと書き込まれていた。
「当時一番多くの公務を行なっていたのはエリザベス女王の長女・アン王女。彼女がダントツです。その次は女王の夫・故エディンバラ王配殿下でした。ほとんどが名誉職とはいえ、アン王女の多忙ぶりは今後も変わらないでしょう。私の夫の兄が通っていたロンドン大学のカレッジでは、学位授与式で総長のアン王女が賞状を学生一人ひとりに手渡していましたね。それだけでなく式の後のパーティにも最初から最後まで列席して、卒業生の親御さんたち全員と気さくに話していたのです。王女はエディンバラ大学総長でもあるので、授与式のシーズンになると、カレッジごとに1日何回も繰り返していたそうです」(塩田さん)