成果を生む根源は「従業員のやる気」

従業員教育でもっとも大切なのは、彼ら自身のやる気を引き出すことだ。

そのために、私は何度でも現地の会社に行き、社員と弁当をつつきながらの懇談会を開き、熱心に話をする。幹部社員は会食に連れ出す。

そこで、「生産性を上げる永守流の経営をすれば、業績は回復すること」、「あげた利益は、会社の成長のための再投資に使うこと」、「会社が成長したら、従業員に利益を還元すること」などを根気よく伝えている。

こうして永守流経営の考え方を理解してもらえる土壌をつくり、社員の意識を変えていくのだ。

最初のうち、従業員たちはそれを信じない。半信半疑の眼で私の話を聞いている。しかし次第に業績が回復していくと私の話を信じるようになっていく。それと同時に、彼らのやる気もぐんぐん出てきて大きな成果が出始めるのだ。

海外の企業を買収するときも同じである。基本的に経営者や従業員は変えない。いきなり文化や習慣の違う日本人の経営者を送り込んでも、現地の人の心はつかめないどころか離れてしまうからだ。それより私の信念や方法論を理解してもらい、やる気を出してもらうほうが大切だ。

情熱と教育がすべてを決める

このように、結局は情熱と教育がすべてを決めるというのが、これまで50年間会社経営をしてきた私の実感である。

日本電産を創業したときも、私を含めて社員は皆、有名大学や一流大学の出身ではなかった。しかしお金も知名度も実績もないなかで我々は大企業の2倍働くと決め、会社の理念の一つである「知的ハードワーキング」を必死に続けた結果、世界一のモーターメーカーに成長することができたのだ。会社を大きくしてきた創業メンバーは皆、我が社の大幹部になった。

また、これまで画期的な開発をしてきたからこそ世界一のモーターメーカーになれたわけだが、その開発をしてきた社員たちだって一流大学出身というわけではない。

IQよりEQの高い社員たちが懸命に働き、持てる潜在能力を大いに発揮したことが、大きな飛躍につながったと信じている。

人間の潜在能力を生かせるかどうかは、このEQを伸ばせるかどうかにかかっているのである。

話を受験勉強に戻そう。皆さんのEQを高めるにはどうすれば良いのだろうか。それには大きい夢を持って、将来こうなりたい、この学部に行きたい、この学問を学びたいという強い意志を持つことだと思う。そのことは拙著『大学で何を学ぶか』で詳しく述べることにしたい。

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