※本稿は、永守重信『大学で何を学ぶか』(小学館新書)の一部を再編集したものです。
4人でスタートした日本電産
私は今、日本電産という会社で会長とCEO(最高経営責任者)を務めている。日本電産は2023年4月にニデックに社名変更をするのだが、日本電産という社名自体を知らない人もいるかもしれない。しかし、皆さんが持つスマートフォンやゲーム機、パソコン、家にある自動車、それらの中には我が社のモーターが使われている。
「世界一の会社になる!」という大きな目標を掲げて、私が3人の仲間たちと京都に日本電産を設立したのは、今から約50年前の1973年のことだ。
最初の本社は自宅の6畳間、工場はプレハブ小屋で、私以外の社員は3人。
そんな我が社が事業の中心に据えたのは、私自身が学生時代から研究し続けてきた精密小型モーターだった。
自宅の6畳間から、50年後に1兆9000億円企業へ
しかし当時、製品を発注してくれる会社は国内にほとんどなかった。当初はお金もない、人も少ない、知名度もない、ないないづくしの零細企業だったから、それも当然かもしれない。
そこで私たちは海外に販路を求めた。「日本でだめならアメリカで勝負だ」と必死の思いで私は自らアメリカに渡り、片っ端から現地で企業の門を叩いたのだ。
そして独自の発想と技術力によって、当時は難しいといわれていたモーターの小型化に成功して大口の注文を取った。これを皮切りに「世界初」や「世界最小」といった、他社に真似のできない製品を次々と世に送り出してきたのである。
50年前にたった4人で始めた小さな会社は、現在では世界43カ国に300社を超える関連会社と、約14万人の従業員を抱え、1兆9000億円の売上高(2022年3月期)を誇る総合モーターメーカーに成長している。