※本稿は、永守重信『人生をひらく』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。
成長する企業を見極める簡単な質問
京都には、「京都市ベンチャー企業目利き委員会」というのがあって、以前、私も委員長を務めたことがあります。2代目委員長の堀場雅夫さんが亡くなられたあと、「委員長をやってほしい。京都のために尽くしてくださいよ」と言われて、断り切れずに委員長になったのです。
ベンチャーというのはお金がないので、目利き委員会のほうで、A、B、Cとランクをつけて、Aランクをもらうと銀行の融資が受けやすくなる。そんな仕組みです。多くの委員は、「これはどういう理屈で、こういう製品をつくっているのか? 今後のマーケットはどうだ」とか、製品・サービスのことばかり聞いている中、私はそういうことは一つも聞きませんでした。
たいていの場合、私の質問は「あなたは何時に会社に来ている? それで何時に帰る? 土曜日に何をしている?」だけで、その答えいかんによって、「これはAだ」と答えるようにしていました。
そのときは、「そんな質問だけで、Aをつけるなんて!」と言う人もいましたが、そのあと、京都市の副市長さんが来て「永守さんは本業のことは何もお聞きになりませんでしたが、結局、永守さんがAを付けられたところは全部残っています」と教えてくれました。
学校の成績は見なくていい…「学校を休んでいない人」を採用せよ
そもそも、ベンチャー企業というものは、そんなに大した技術は持っていません。私が創業したのは28歳で、社会に出て6年くらい。武器にたとえるなら弾が一発だけ入っている小さなピストル程度でしょう。それに比べて、大会社というのは、機関銃で撃ちまくっている。かたや弾が一発しかないベンチャーは、パーンと撃って外れたらそれで終わりです。
だから、技術のすばらしさというのは、関係ないのです。たまたま一発目の弾が当たったとしても、撃ったらそれでおしまいです。もう弾はありません。だから、一発目が当たったら次、次、次と、持続的にやれるかどうかだけの話なのです。
これは人を採用するときも同じで、日本電産では今では高卒の人を採ることは少なくなりましたが、以前は、「採用するときは学校の成績とかそんなものは見なくていい。何を見るかわかるか。出席率を見ろ。学校を休んでいない人を採れ。高校生活3年間、全然休んでいないやつを採ってみろ。勉強とかそんなものは関係ない」と言ったら、見事にいい人が入ってきてくれました。
その頃、他の会社では、成績がAの人とか、非常に好感の持てる青年を採っていたようですが、そうした人の多くは敵前逃亡、逃げていってしまったという話を聞いたことがあります。