1万2000人の新入社員を迎えてわかったこと

日本電産では、これまでに1万2000人ほどの新入社員を迎えてきた。そして、人材の採用や教育を行なっているうち、私は「今の日本の大学教育は間違っているのではないか」と考えるようになった。

日本の企業の採用戦略は、今なお有名大学や偏差値の高い大学から人材を選ぶのが主流だ。だが、そうした大学を出ても学生が社会に出たときに活躍できる力が身についているかといえば、疑問である。

経験を踏まえて正直に言わせていただくと、世界水準の実力を備えた人材が十分に育っているとはいえないと思う。

それなら、実力が身につくような大学を自分でつくればいい。私は次第にそう考えるようになった。

「教育を変えれば、人は変わる」

そこで2018年、京都学園大学を運営する学校法人の理事長になって大改革に乗り出したのである。

翌年には「京都先端科学大学」と校名を変更し、2020年からは新たに工学部も開設した。これから自動車の主流となるのは電気自動車である。さらに、産業全体を見渡せばロボットやAI(人工知能)の時代になる。そんな時代に活躍できるプロのエンジニアやビジネスパーソンを育てるためだ。

2021年からはより早い時期からの教育が必要だと考え、附属中学校や附属高校での一貫教育も始めた。ビジネスリーダーを育てるためのビジネススクールも2022年に開設した。

大学改革に着手してから、4年余り。インターンシップ(企業での就業体験)や海外留学に挑戦する学生、起業を目指す学生も増えてきた。何より学生たちの顔つきがガラッと変わった。

入学式で暗い目をしていた4年前とは打って変わり、今、授業に臨む学生たちの顔や眼差しは希望に満ちあふれている。私は今、「教育を変えれば、人は変わる」という思いを実感している。