2022年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。教育・子育て部門の第5位は――。(初公開日:2022年10月1日)
日本電産の永守重信会長には、もう1つ、中高大一貫教育の京都先端科学大学を運営する学校法人永守学園理事長としての顔がある。世界を相手に1分1秒を争う厳しい競争に身を置きながら、限られた時間を割いてなぜ「教育」に情熱を注ぐのか。この度上梓した『大学で何を学ぶか』で明かされた若者たちへの熱い思いを特別公開する──。

※本稿は、永守重信『大学で何を学ぶか』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

京都先端科学大学で講演をする永守重信日本電産会長兼永守学園理事長
写真提供=日本電産
京都先端科学大学で講演をする永守重信日本電産会長兼永守学園理事長

4人でスタートした日本電産

私は今、日本電産という会社で会長とCEO(最高経営責任者)を務めている。日本電産は2023年4月にニデックに社名変更をするのだが、日本電産という社名自体を知らない人もいるかもしれない。しかし、皆さんが持つスマートフォンやゲーム機、パソコン、家にある自動車、それらの中には我が社のモーターが使われている。

「世界一の会社になる!」という大きな目標を掲げて、私が3人の仲間たちと京都に日本電産を設立したのは、今から約50年前の1973年のことだ。

最初の本社は自宅の6畳間、工場はプレハブ小屋で、私以外の社員は3人。

そんな我が社が事業の中心にえたのは、私自身が学生時代から研究し続けてきた精密小型モーターだった。

自宅の6畳間から、50年後に1兆9000億円企業へ

しかし当時、製品を発注してくれる会社は国内にほとんどなかった。当初はお金もない、人も少ない、知名度もない、ないないづくしの零細企業だったから、それも当然かもしれない。

そこで私たちは海外に販路を求めた。「日本でだめならアメリカで勝負だ」と必死の思いで私は自らアメリカに渡り、片っ端から現地で企業の門を叩いたのだ。

そして独自の発想と技術力によって、当時は難しいといわれていたモーターの小型化に成功して大口の注文を取った。これを皮切りに「世界初」や「世界最小」といった、他社に真似のできない製品を次々と世に送り出してきたのである。

50年前にたった4人で始めた小さな会社は、現在では世界43カ国に300社を超える関連会社と、約14万人の従業員を抱え、1兆9000億円の売上高(2022年3月期)を誇る総合モーターメーカーに成長している。