日本の大学の大問題

そもそも私が大学の経営を始めたのは、世界に通用する人材を育てるためだ。

永守重信『大学で何を学ぶか』(小学館新書)
永守重信『大学で何を学ぶか』(小学館新書)

自分のやりたい学問よりも偏差値で大学や学部を選ぶ「偏差値教育」や、有名大学に入ることにこだわる「ブランド大学主義」が中心の日本の教育システムでは、若い人の能力を十分に伸ばしきれないと考えている。

小さな頃から試験に追われる子どもたちの目標は、たいていは親や塾の勧める偏差値の高い大学、有名な大学に入ることである。

高校の進路指導でも、学部や学科選びの指導は二の次で、とにかく有名大学、すなわち偏差値の高い大学を目指すことが良しとされている。本人が何を学びたいか、どんな仕事をしたいかを教師と話すようなことは少なく、大学選びがもっとも重要視され、有名大学に入ることが推奨されるのだ。

これでは本人の学ぶ意欲や主体性は削がれてしまうのではないか。

一流大学出身者に根本的に欠けているもの

また、希望の大学に入れたとしても、問題は社会に出た後である。

一流大学に合格することだけを目的として試験勉強に勤しんできた人は大学に受かった途端、ほっとして遊んでしまうことや燃え尽きてしまうことがある。

その結果、一流大学に入っても自分の専門分野をしっかり磨くこともせず、大事な4年間を無駄に過ごす人も多い。

一流大学を卒業すれば、そのブランド力で企業から内定をもらえるかもしれない。しかし、自分の専門分野もなく、自分が何をしたいかという目標もない場合、結局は「大企業だから」とか「安定しているから」という理由で企業を選ぶことになる。

それでは仕事への情熱は持ちにくい。自分から前向きに取り組むモチベーションも生まれてこないはずだ。仕事では辛いことも当然あるが、そんなときに「負けるものか」という気概も湧いてこない。