これまで多くの従業員や経営者を見ていて実感するのは、IQなどの能力的な差が生み出す成果の差は、どんなに頭がいい人でも普通の人のせいぜい5倍程度だということである。

しかし、EQの高い社員とやる気のない社員の成果の差は100倍以上にもなることがある。いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。

買収企業はリストラではなく、従業員教育で立て直す

私は創業当初から従業員の育成について熱心に取り組み、社内にもいろいろな塾や経営人材育成プログラムなどをつくって人材を育ててきたが、EQの高い社員は学べば学ぶほど、意識が変われば変わるほど、その潜在能力を伸ばし、成果をあげることを実感している。

たとえば、こんなこともあった。会社ぐるみで変わった例である。

手を重ね合わせ団結するビジネスマン
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我が社では別の企業を買収するときも原則としてリストラはせずに立て直すが、その際はいつも従業員を教育することで会社を立て直してきた。

2003年に精密小型モーター分野で強力なライバル会社が2期連続で赤字を出し、倒産寸前に陥ったときのことだ。

私はその会社を買収することにした。その会社には不良資産が多かったため、社内には反対する者も多かったが、製品は非常に優れており、従業員たちの技術力も高いことがよくわかっていたからだ。

社員の意識改革で赤字287億円の企業が、1年で150億円の黒字に

しかしコスト意識に欠けている体質があった。

そこで私は、毎週2泊3日をかけてその会社に通い、日本電産流のコスト管理法を徹底して教育し、従業員に危機感とやる気を持たせるよう、私なりのメッセージを伝え続けた。

すると翌年、黒字転換した。この間、一人の人間も解雇していない。

同じ従業員たちが同じ設備をそのまま使い、景気もそれほど大きく変わっていないのに、前年に287億円もあった赤字を、わずか1年で150億円の黒字へと変えることができたのである。

何が変わったのか。それは、従業員の意識である。