「セダン」という車型にとらわれていないか
そして決定的なのは、来年以降同じクラウンブランド内に「クラウン・スポーツ」と「クラウン・エステート」という大小2種の5ドアSUVが投入されるということだ。
とくにエステートは広いリアシートと大きな荷室が備わると思われる。またフォーマルな佇まいのクラウン・セダンも投入されるので、伝統的セダン指向層は素直にセダンを選ぶだろう。
結局のところ、クラウン・クロスオーバーは誰が買うのか非常にイメージしにくいモデルとなってしまった。
クロスオーバーは「新しい時代のセダンとは」というのが開発の出発点だったと思われる。セダンという車型にとらわれてしまったことが徒となって中途半端なものになってしまったのではないか。
本来は「新しい時代の高級車とは」とか、「新しい時代のフォーマルカーとは」という視点で開発するべきではなかったか。
実際、SUVルックのセダンとしては、ボルボが2015年にセダンのS60をSUV仕立てにしたS60クロスカントリーという車種を発売したが、セダン指向層にもSUV指向層にも受け入れられず、ごく少数の販売にとどまって2年あまりで生産中止となったという過去がある。似たような経緯をたどらなければよいがと危惧する。
新型クラウンに立ちはだかる「厚い壁」
クロスオーバーは発売当初は話題にはなるだろうが、おそらく中長期的な大ヒットとはならず、クラウンはスポーツとエステートを中心としたSUVブランドとなっていくだろう。
しかしSUVは激戦区であり、クラウンは価格帯的にブランド力のあるさまざまなプレミアムブランドと戦わなければならないし、レクサスともオーバーラップしてしまう。
トヨタのブランドイメージはグローバルでも非常に高いが、あくまで安心と信頼を核としたマスブランドであり、高級車に求められるプレミアム性はない。
また、日本と違ってクラウンという名は海外ではほとんど知られておらず、日本のように名前だけで高級イメージを抱いてもらうことはできない。一からブランド構築を始めなければならず、レクサスとの差別化も図らなければならない。
車型的には売りやすいスポーツやエステートであっても、楽観視することはできないだろう。クラウンの戦いはかなり厳しいものになるのではないだろうか。