1回当たりの平均購買単価は約5300円で、SMの平均客単価(平日1988.5円、土日・祝日2259.0円)の2.3~2.6倍。消費者1人のSM(スーパーマーケット)への平均来店頻度が週2.1回であることを考慮すると、トドックで1週間分の食生活をカバーしている利用者が多いことを示している。
トドックの20年度(21年3月期)の供給高は960億円、21年度には1085億円とついに1000億円台に達した。道内限定の無店舗販売としては突出した事業規模だ。
トドックの配達車両1台が一日に配達に回る数は平均80軒。単純計算で一日当たりの供給高は42万円ということになる。これはセイコーマートの平均日販とほぼ同じ水準である。配達車両は約1000台あり、土日を除いて道内全域でフル稼働している。
つまりトドックの規模感は、道内で1000店をチェーン展開するセコマとほぼ同じ(トドックは土日が休みという点が異なる)ということになる。
ネットスーパーを突き放す半世紀前からの蓄積
事業規模にも増して驚異的なのが利益率の高さだ。
トドックの20年度の経常剰余率(民間企業の経常利益率に相当)は8.6%に達した。SMのチェーンストアの場合、利益率2%台後半で優良企業、ネットスーパーとなると黒字化できている企業はほとんどないと言われている。
トドックの利益率の高さは第一に〈生協の宅配〉のビジネスモデルに起因する。
生協の宅配の前身となる共同購入をはじめて事業化したのは、1968年の静岡生協(後のコープしずおか、現ユーコープ)である。店舗を補完する目的で手がけていた移動販売車の巡回供給を〈班単位で〉〈月1回ごとに〉〈商品を一括して予約・購入する〉仕組みに変更し、事業として独立させたのが始まりだ。
70年代に入り、この共同購入モデルを採用した生協が全国各地で設立され、月次配送から週次配送へと発展。店舗のみで事業を始めたコープさっぽろも80年に組織供給事業部(現宅配事業本部)を新設し、共同購入を事業化した。
生協の宅配の主流は、3人1組の〈班〉対象の共同購入から、90年代以降、個別配送に移行したが、生協陣営は半世紀という時間をかけて物流・配送インフラの整備、システムへの投資、ノウハウを積み上げてきた。この蓄積に、他のネットスーパーが追いつくのは至難の業である。
コロナ禍による巣ごもり需要が発生した20年度、国内121の地域生協の宅配供給高は2兆1327億円とはじめて2兆円を超え、経常剰余金は900億円に達した(店舗事業は15億円の赤字)。
「ポツンと一軒家」でも札幌と同じ買い物ができる
もっとも、生協の宅配の経常剰余率は全国平均で4%。これでも十分に高いが、トドックの8.6%は異常値というべき高水準である。コープさっぽろの宅配事業はなぜこのような数値をたたき出すことができるのだろうか。
トドックの強さを支えているのは、何と言っても商品力だ。〈食の安全・安心〉を看板に掲げる生協ならではの商品の質に加え、量の充実には目を見張るものがある。