夫のおかげで豊かで濃密な20代、30代を送ることができた
子どもたちやスタッフとの関わりにおいて、異文化の人たちと向き合っていることを意識し、どうすれば相手に分かってもらえるのかを基準に語りかけることを心がけてきました。
そのため、夫が私に言ってきた「バスタオルと下着」の時のやりとりのように、こちらの不満や意見をいきなりぶつけることはせず、なめられると言われても相手の理由や意見を聞くことから始めました。
いくら心がけていても時には感情的になり自身の未熟さを思い知らされることもありましたが、そのときの反省がなければ時間をかけて丁寧に向き合うことで信頼関係ができるということにも気づけなかったでしょう。
20代の私は目前の取組が将来の何につながっているかなど考える余裕もなく、迷い、悩み、それでも進むしかなかったのだと思います。施設の卒業生たちが築いた新しい家族との幸せな姿や遠方の就職先から帰省したときに子どもたちと遊ぶ姿があの頃の答え合わせなのかもしれません。
豊かで濃密な20、30代を送ることができたと穏やかに過去を振り返る今、もしあのとき風呂上がりの夫がもっと違う言い方をしてくれていたらと考えることもあります。でも、施設運営を通じて得た私にしかない歩みを思うと、あのときの選択に間違いはなかったと納得しつつ、結局のところ私の人生をこれほど興味深いものにしてくれたのは元夫なのかもしれないなと思ったりもするのです。