「砂浜減少」は米軍が埋め立てた土地

波によって砂浜が広がり面積を増やす場所がある一方で、砂が流されて海岸浸食が起きている地点もある。

もちろん海面上昇による浸食分もあるだろう。ただ、その両者の差し引きがプラスになったのだ。

しかし、砂浜の減少や地下水の塩水化など、面積減少以外にも、海面上昇によるさまざまな現象も起きていたはずだ。

写真=iStock.com/Rowan Jordan
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ただそれについても、複数の調査結果が出ている。

まず浸食された海岸の多くは、第2次世界大戦時に米軍が埋め立てた土地だった。

各地の島から飛行場を建設するために砂利を採取したため、穴だらけになった島では海水が染み出すようになった。

浸水がひどい場所は、もともと人の住めない湿地に無理やり家を建てた土地だった。

内陸部での海水の浸水現象自体、約100年前から観察されていた。

サンゴが衰退していることも分かった。海水温度の上昇と海面上昇により海が深くなったからではなく、生活排水やゴミ投棄などによってサンゴが痛めつけられたからだ。

ツバルの砂浜を形成する有孔虫などの生物が死んで、砂が生まれなくなったことが、砂浜減少の一因だった。

ツバルの変化は「人口増加によるもの」

これらの環境悪化をもたらした一因は、人口増加にある。

たとえばツバルの首都の人口は、独立前(1973年)は871人だったが、独立した5年後の79年には2620人に急増している。

これが湿地や低地に住居や行政施設を多く建てたり、真水の過剰利用(井戸からの地下水汲み上げ増加)と下水の垂れ流しを引き起こした。

この人口増加と環境汚染という「ローカルな要因」が、ツバルの“国土水没”を招いていたのだ。

ちなみに、「住民が波打ち際に立って浸水を訴えるシーン」を演出した人を私は知っている。こうしたらテレビ映りがいいよ、と助言したそうである。