※本稿は、田中淳夫『虚構の森』(新泉社)の一部を再編集したものです。
氷が溶けるより重要な「海水の膨張」
海面の上昇と言えば、温度上昇で南極やグリーンランドなどの陸氷が溶け、海の水が増えることをイメージする。
だが、それ以上に重要なのは、海水の膨張である。
水は、温度が上がると体積が増える性質がある。気温とともに水温も上がると、水の量が増えたのと同じ効果となり、海面を押し上げる。
実際に大洋(太平洋、大西洋、インド洋)の多くの島国では、海面上昇を感じさせる現象が頻発している。
実例としてよく挙げられるのは、砂浜が痩せ細り、海岸に生えていたヤシの木が波によって倒れたとか、住居のすぐ側まで波が打ちつけるようになった……といったものだ。
住民が波打ち際に立って足を海水に浸しながら「以前はここまで陸地だったんだ!」と訴えるシーンが、よくテレビで放映されている。
島民の生活に直接的な影響を与える事例も多い。
たとえば生活用水として使う井戸水が海水混じりになってきた、大潮のときに、内陸部で海水が噴き出した、沖合いの小島が消えた、といった報告もよくある。
「ツバル諸島の面積」実は増えていた
海面上昇問題で有名になったのは、南太平洋の島嶼国家ツバルだろう。
国土のほとんどが海抜1~2メートルしかない珊瑚礁の島々であり、海面上昇によって国全体が水没の危機にあるとされている。
このまま海面上昇が続けば、国土そのものがなくなり、国民は行き場を失いかねない。
そこで2002年にツバルは、大国や大企業は地球温暖化ガス排出量の抑制や削減に不熱心で、ツバルを沈没の危機にさらしている、と大国を提訴すると表明したこともある(実際には提訴は困難と判断して中止した)。
一方で、オーストラリアとニュージーランドに環境難民の受け入れを要請した(こちらも拒否されて、ニュージーランドに労働移民として少人数受け入れられただけ)。
ツバルはどうなるのか……。先のテレビ映像を見ていた人は、そんな心配をするだろう。
だが、ここに意外な事実がある。ツバルの面積を調べたところ、逆に増えていたのだ。