転売ヤーは「ズルい」のか
ここまで読んでいただいた方の多くは「法律の不備を突いて儲けるなんて、転売ヤーは汚すぎる」という感想を持ったのではないか。もしくは、「なんか込み入った話で、大変そうだな」くらいの感想だろうか。いずれにしても、自分とはあまり関係のない世界という感がある。
だが、日本に住んでいる人でこの問題と関わりのない人は、ほとんどいないと断言できる。それはなぜか。キャリアが端末を割引販売する原資は、当然ながらキャリアの得た営業収益から捻出されているからだ。それはつまり、「あなたが転売ヤーの食い扶持を支払っている」ということに他ならない。
格安SIMユーザーであっても同様だ。格安SIMはキャリアから回線を間借りすることでサービスを提供しており、収益の一部はキャリアに還元されている。そのため、「私はドコモもauもソフトバンクも使っていないから、関係がない」とは言えないのである。
携帯キャリアがスマートフォン本体をいくらで仕入れているのかは不明だが、前述のようにiPhone12を2万2000円で販売したら、赤字なのは間違いないだろう。大サービスの割引原資は、あなたが支払った料金だ。
私自身も不健全な状況ではあると思うが、転売ヤーを批判するつもりはない。法律で認められた範囲であれば、誰もが自らの利益のために最善手を打つ権利があると思う。
ふるさと納税の返礼品に金券を選ぶのは「ズルくない」のか
私の家の近所には、スーパーが数件ある。その日の気分でどこに行くかを決め、肉や野菜などの食材を買うのだが、スーパーへ行く前にチラシをチェックして、安い方のスーパーを選ぶようなことはしない。おそらく、ご近所の主婦から見れば無駄遣いだろう。この場合、私がスーパーマーケットに対するリテラシーを持っていないから、無駄なお金を払っていることになる。では、チラシを比較して「スーパーマーケットでお得に買い物する主婦」はズルいのだろうか。
以前、ふるさと納税(そういえば、これも菅元総理の肝いり施策だ)で大阪府泉佐野市や静岡県小山市が返礼品に金券を用意し、多数のふるさと納税を集めたことがあったが、「換金性の高いプリペイドカード」の返礼品は総務大臣による通知で禁止されていた。
しかしながら納税者にペナルティーはないため、多くのメディアで取り上げられたし、実際にふるさと納税でこれらの自治体を選んだ人も多いだろう。これも感情的な面で言えば「ズルい」と思うし、国の財産である税金を盗んでいるわけだから、ある意味では携帯キャリアから金を(間接的に)奪う移動機販売よりも悪質だと思うのだが、なぜかこちらを批判する声は少ない。