「端末代金と通信料金の完全分離」は愚策だった
私個人の意見で言えば、回線と割引のセット販売自体は所持できる回線数に上限がある以上、無限に特価を享受することはできないため、これを廃止してしまった「端末代金と通信料金の完全分離」は愚策だったと思っている。
しかし一度禁止となった施策が復活するとは思えないので、「1名義、もしくは1機種につき特価販売は年間〇回まで」と、割引が適用できる回数に上限を定めてしまえばこうした状況は緩和されると思う。既に一部キャリアでは、こうした運用を行う動きも出ているようだ。
もちろん、これでも一部の転売ヤーは名義を借りるなど、何らかの方法で突破を図ってくるだろうし、販売履歴を審査するキャリア側の負担は増える。それでも現状よりはマシになるはずだ。ただし、これだけでは前述したような「端末を割り引いてくれない大手キャリアを使う理由がない」という問題は解決していないため、応急措置にしかなりえない可能性は残る。
制度の隙が、人を転売ヤーに変えてしまう
転売ヤーは制度の隙を突いてくる。転売行為を止めたいのであれば、制度そのものを変えるしかない。……と、きれいに結論付けたいところだが、移動機販売が流行してからはインターネット上では移動機販売で端末を購入し利益を出すためのマニュアルなどが販売されるような状況になっているし、SNS上で携帯電話の転売に関するトピックを大っぴらに話す人も増えた。
携帯電話の転売シーンは、電気通信事業法の改正前後で状況が大きく変化したように感じられる。恫喝を行うような行為がまかり通るようになったのも、法改正が行われたからだ。
そうなると「転売ヤーが制度の隙を突いてくる」のではなく、「制度の隙が、人を転売ヤーに変えてしまう」のではないだろうか?
そうなると、転売行為が行われないような制度設計を行う必要があるのだが、利益を目的とした携帯電話の購入や販売はポケベルやPHSの時代から存在している。短絡的に「これを変更すれば、すべてうまくいく」という簡単な話ではない。
今まで一般人から見て携帯電話の世界は「複雑で難しいから」という理由で、非常に身近であるにもかかわらずスルーされがちな分野だった。今回の転売問題で多少なりともスポットライトが当たり、前向きな議論が行われることを祈っている。