若くなればなるほど、実質年収は低くなっている
図表6は、大卒の男性正社員の年齢別実質年収(2021年価格)を、生まれた年代別にみたものである。出生年が遅い世代ほど、実質年収が低下していることがわかる。1963~67年生まれの世代に比べて、1973~77年生まれ(おおむね団塊ジュニアに該当する年代)が属する40歳代後半の平均年収が150万円程度少ない。
これほど大幅な賃金水準の低下は、定期昇給が実質的になくなったことや同一の仕事でも単純に賃金が低下していることだけでは説明できない。大学進学率の上昇に、高度人材向け雇用の受け皿の拡大が追い付いていないという要因もある。
バブル崩壊以降の経済成長の長期停滞により、高度人材向けの仕事が増えず、以前は高学歴者が就くことは想定されていなかった職種や仕事に、大卒者が就く例が少なくないため、結果として大卒者の平均賃金が押し下げられている面がある。しかも、大学進学のために奨学金制度を利用している学生も多く、借金を持った状態で社会に出てくる若者も増えている。
「安定した男性正社員」も子どもを持つことに後ろ向き
職種別に男性の希望子ども数をみると、それまで横ばいで推移してきた男性正社員も、2015年には大きく下振れした(図表7)。賃金が比較的高く、雇用も安定していると考えられる「正規職員」であっても、「子どもは0ないし1人」など、多くの子どもを持つことに前向きなイメージが持てない男性が増えていることになる。
男性同様、女性も厳しい環境に置かれている。社人研の調査(2015年)によれば、35歳未満の未婚女性で、自らのライフコースとして「非婚就業継続」を理想のライフコースとする人は5.8%しかいないが、実際にはそうなってしまうだろうと考える人(予定ライフコース)は21.0%いる。
すなわち、結婚を希望しながら、希望はかなわないと考えている人が一定数いるということになる。特に、非正規雇用の女性は、正規雇用者に比べて「非婚就業コース」の選択率が高い傾向にある。結果として、非正規雇用者で、2010年から15年にかけて希望子ども数の低下が顕著となっている(図表8)。