男性も女性も収入が下がり、広がる「あきらめ」

非正規雇用の女性が結婚や出産に後ろ向きとなる要因としては、収入の低さと無縁ではない。男性の実質年収が下がっていることもあり、近年、男性が経済力のある女性を求める傾向が強まっている。

社人研の調査によれば、男性が結婚相手となる女性に求める条件として「経済力」を考慮・重視する割合は、1992年の26.7%から2015年には41.9%に高まっており、低収入の女性にとって、結婚に向けたハードルは高くなりつつあるといえよう。

若い世代が子どもを生み、育てていくことに対する中長期の展望を描きづらくなり、彼らの一部に一種の「あきらめ」が広がっている可能性がある。少子化対策を考えるうえで、男性、女性を問わず、若い世代の収入や就業状況に注目することが不可欠である。

2030年までが、少子化対策のラストチャンス

わが国の人口構成を考えると、1990年代に生まれた世代が、今まさに出産期に差し掛かっている。少子化といわれながらも、1990年代には毎年約120万人の出生数があり、その世代は現在20~30歳となっている。出生数の変化を要因分解した図表9の通り、2017年以降、わが国の年齢構成要因が出生数を押し下げる効果は徐々に減り、2020年にはわずかながら押し上げた。

【図表9】わが国の出生数変化の要因分解(含む:年齢構成要因)
出典=厚生労働省「人口動態統計 確報」

すなわち、少子化にブレーキをかけるという面からみれば、若い世代の人口が大きく減ることのない今後10年程度は、本格的な少子化対策を講じるラストチャンスと考えるべきである。

2000年以降に生まれた世代の出生数は、年率1%ずつ減少し、2016年以降は、さらに減少ペースが加速している。すなわち、2030年ごろまでの好機を逃し、2000年以降に生まれた世代が出産期の中心世代となってしまえば、たとえ出生率を引き上げることができても、人口の絶対数の面から、出生数の減少にブレーキをかけることは困難となる。

わが国に残された時間は、1990年代生まれの世代が出産期にある2030年ごろまでとの認識のもと、総力戦で少子化対策に取り組むことが望まれる。

出生意欲を引き上げていくためには、若い世代の所得や就業状況を改善させて「日本で子を生み育てたい」と思える社会を作る以外に方策はなく、財源の問題を含め、これまでの少子化対策の在り方を根本から見直すことが必要となる。

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