若い世代で有配偶出生率が低下している

2015年までは緩やかに減少してきた出生数が、2016年以降、急減に転じた背景として最も注目すべきは、これまで出生数の押し上げ要因であった有配偶出生率が一転、押し下げ要因となったことである。

押し下げ幅としては、人口要因に及ばないものの、2015年には2万人程度の押し上げ要因であったものが、2020年にはマイナス7000人の押し下げ要因となっており、そのプラスからマイナスへの変化が出生数の減少に与えた影響は小さくなかった。

なお、2005年ごろまでは婚姻率要因、すなわち婚姻率の低下が出生数減少の主因となっていたが、足元では非婚化・晩婚化が少子化に与える影響は小さくなっている。

政策当局者のみならず一般的な社会通念として、わが国では結婚さえしてくれれば、ある程度の出生数は見込めるという見通しがあった。その見通しの拠り所は、婚姻率の低下が出生数減少の主因であった1990年代から2005年ごろにあっても、有配偶出生率は出生数の押し上げ要因であり続けたことである。

そうした見通しを裏切る形で、2016年以降は有配偶出生率が出生数を押し下げる一因となったのである。年齢別に有配偶出生率をみると、20歳代女性で明らかに低下しており、これまで一貫して上昇傾向にあった30歳代も横ばいとなった(図表3)。

【図表3】女性の年齢別、有配偶出生率の推移
出典=総務省「国勢調査」

わが国の少子化が、「有配偶出生率の低下」という新しいステージに差し掛かったということを認識しなければならない。

子どもはゼロ、あるいは1人という夫婦が増加

有配偶出生率の低下には、大きく分けて2つの理由が想定される。

第1に、晩婚化、晩産化によって妊娠の適期を逃し、子どもが欲しくてもできない夫婦が増えている可能性である。しかし、2015年以降、女性の平均初婚年齢と第1子出産年齢には全く上昇がみられておらず、晩婚化等による有配偶出生率の低下は大きな要因ではないと考えられる。

第2の理由は、いわば「出生意欲の低下」と呼べる現象が生じている可能性である。たとえ結婚をしても、子どもがいらない、あるいは1人など、夫婦の希望子ども数が低下しているということである。