「希望する子どもの数」はどの層でも右肩下がり

足元で若い世代の「出生意欲の低下」が進行していることを示唆するデータは、すでに国立社会保障人口問題研究所(以下、社人研)がおおむね5年ごとに実施している出生動向基本調査(以下、調査)にみることができる。

最新は2015年の第15回調査で、第16回はほどなく発表される予定である。直近の出生意欲の状況を確認するにはその発表を待つしかないが、第15回調査にも、若い世代の「出生意欲の低下」を示唆するデータがある。

図表4には、第15回調査までの男女別、未婚者の希望子ども数と夫婦の予定子ども数の推移を示した。未婚者の希望子ども数に関しては、結婚意思のある対象者だけに絞った状況も併記した。

【図表4】既婚者の予定子ども数と未婚者の希望子ども数の推移
出典=国立社会保障人口問題研究所「出生動向基本調査」

2015年の調査で最も大きな落ち込みがみられたのは未婚の男性で、1.74人となった。2010年調査では2.00人であった未婚女性も、2015年調査では1.88人まで低下している。結婚意思のある未婚者に絞っても、男性1.91人、女性2.02人と低水準であった。

2015年の調査で希望子ども数の低下がみられた世代が、その後結婚、出産期を迎え、足元の低い有配偶出生率をもたらしていると考えられる。

「子どもをつくらない」理由は経済・雇用環境

出生意欲の低下をもたらす最大の要因は、若い世代の経済環境の悪化と考えられる。

図表5に示した通り、社人研の第15回調査によれば、妻の年齢が30〜34歳の夫婦では、理想子ども数まで子どもをつくらない理由として、およそ8割が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を選択している(複数回答可)。

【図表5】夫婦が理想の子ども数を持たない理由(妻の年齢30~34歳)
出典=国立社会保障人口問題研究所「出生動向基本調査」

自らの収入に対して高すぎる子育て費用や教育費が、出生意欲の低下に影響を及ぼしていると考えられる。実際、社人研の調査によれば、子どもの数別に夫婦の割合をみると、2人以上の子どもを持つ夫婦の割合が低下し、0人あるいは1人の夫婦が増加している。

そこで、若い世代の経済・雇用環境の一端を概観してみたい。