タダでもいらないものは「本当にいらない」

人がお金を支出するのは、それに見合う満足感を得るためです。つまり、お金で満足感を買う。そのとき、商品が媒介することもあれば、サービスが媒介する場合もあります。その満足する価値のあり方がここにきて変わってきた。

景気がいいときは、誰かが買ったから自分も買おうという「無意識の競争意識」が消費を喚起する部分がありました。人が買ったモノを自分も買う。それがモノ余りで消費が飽和した時代になり、競争意識が薄らいできて、「無駄な競争」に変わってきた。

買い手が価値を感じない商品は半額の50%オフでも売れない。端的な話、消費者は「タダでもいらない商品」は本当にタダでもいらないのです。

自分はどんなコトに価値や満足を感じるのか。買いたいものについて何を重視するか。買い手の買い方の知恵が磨かれてきたのです。

「仮説・検証」が納得感を生み出す理由

コトの価値、すなわち、顧客体験価値を重視することは、収益に結びつきます。

鈴木敏文氏(撮影=市来朋久)

同じコンビニエンスストアでありながら、なぜ、セブン‐イレブンは他チェーンに対し、日販でこれほど差を広げることができるのか。要因はさまざまありますが、一つには、セブン‐イレブンがお客様に、商品やサービスの購入をとおして、モノとしての商品の質の高さとともに、ご満足いただけるような、コトとしての体験価値を提供しているからではないかと思われます。

というのも、セブン‐イレブンの各店舗では、「仮説・検証」による単品管理を徹底して実行しているからです。

単品管理について、説明しましょう。

セブン‐イレブンでは、毎日、午前中に翌日のための発注を行います。ただ、明日のお客様のニーズは目に見えません。そこで、明日の売れ筋商品について仮説を立てます。

まず、明日の気象条件、行事・イベントなどの「先行情報」をもとに、お客様の心理を読みます。その心理をもとに、単品ごとに明日の売れ筋商品の仮説を立て、発注し、販売の結果をPOS(販売時点情報管理)データで検証し、次の仮説に活かします。

このサイクルを日々繰り返すのが単品管理です。