懲りなく同じ失敗を繰り返す自民党政府

2022年、小麦の国際価格上昇によって、自民党政府は国産小麦や大豆の増産を行おうとしているが、以上述べたように、これは50年間も実施して失敗した政策の繰り返しである。

現在毎年約2300億円かけて作っている麦や大豆は130万トンにも満たない。同じ金で1年分の消費量を超える小麦約700万トンを輸入できる。しかも、国産小麦の品質は悪い。どれだけ費用がかかってもアメリカ製よりも国産の戦闘機を購入すべきだと言う人はいないはずだ。

減反で生産を抑制している米なら大幅に増産できる。また、品質的に近いカリフォルニア米と比べて、内外価格差は近年縮小し、逆転すらしている。しかし、自民党政府には米を増産して食料危機に対応しようという考えはない。それはタブーなのだ。

日本トップクラスのメガバンクになったJAバンク

アメリカやEUの農業政治団体とJA農協が決定的に違うのは、JA農協は政治団体であると同時にそれ自体が経済事業を行っていることだ。JA農協は、農家というより自己の経済的利益のために政治活動を行っている。農家からすれば、所得を確保するために、価格だろうが財政からの直接支払いだろうが、どちらでもよい。しかし、JA農協という組織のためには、価格でないとダメなのだ。

写真=iStock.com/sqback
※写真はイメージです

米価維持のための減反政策には、隠れた目的がある。

銀行は他の業務の兼業を認められていない。JA農協は、銀行業と他の業務の兼業が許された日本で唯一の特権的な法人である。減反による高米価で米産業に滞留した零細な兼業・高齢農家は、農業所得の4倍以上に上る兼業(サラリーマン)収入や2倍に当たる年金収入などを、JAバンクの口座に貯金した。莫大な農地の転用利益もJAバンクの口座に入った。こうしてJAバンクは、貯金残高100兆円を超す日本上位のメガバンクに発展した。

この莫大な貯金の相当額を、JAバンクの全国団体に当たる農林中金が、日本最大の機関投資家として、ウォールストリートで運用することで、多くの利益を得てきた。高米価・減反政策とJA農協の特権がうまくかみ合い、JA農協の発展をもたらした。減反廃止は、JA農協が発展してきた基盤を壊しかねない。

食料安全保障とか食料自給率向上とは別の利益を維持することが本音だから、これらを損なう政策をとってきたのは、当然だろう。