さらに公明党は今年秋、70歳を迎えた山口代表から64歳の石井啓一幹事長へ党首をバトンタッチすることが既定路線となっている。新体制が発足していきなり改憲に協力させられる事態だけは避けたいところだ。
「憲法改正だけは勘弁してほしいという公明党の姿勢は麻生氏や岸田首相には渡りに船です。改憲論議を進めつつも公明党の顔を立てて継続案件にしつづける。そのかわり、公明党に協力を求める岸田政権の最重要課題があるんです。消費税増税ですよ」(宏池会関係者)
「黄金の3年間」を見逃すはずがない
安倍氏の悲願が憲法改正ならば、岸田政権で完全復権した財務省の悲願は消費税増税である。霞が関に君臨するスーパーエリート官庁はつねに政局に介入して財務省シンパの政権を誕生させ、消費税増税を打ち上げさせてきた。
竹下登、細川護煕、橋本龍太郎、菅直人、野田佳彦……。いずれも財務省に支えられ、財務省のお膳立てに乗って消費税増税で痛打を浴びて倒れた内閣である。財務省はさまざまな内閣を使い倒して世論の風圧の強い消費税増税を一歩一歩進めてきたのだ。
財務省を遠ざけた安倍氏が退場し、財務省の用心棒である麻生氏が君臨する岸田政権は、消費税増税を進める千載一遇の好機である。しかもこの先は国政選挙が予定されていない「黄金の3年間」なのだ。財務省がそれを見逃すはずがない。
24年秋には自民党総裁選がある。それが終われば衆院議員の任期は1年を切り、25年の参院選とあわせて選挙一色になる。消費税増税を実現するとしたら24年の通常国会がタイムリミットだ。
麻生―岸田体制の下で多少強引でも消費税法改正を急ぎ、岸田政権の支持率が急落すれば24年秋の総裁選で宏池会ナンバー2の林外相にバトンタッチして体制を一新し、解散・総選挙になだれ込めばいい――宏池会関係者の間ではそんなシナリオもささやかれている。
だが、24年通常国会となると、時間的余裕はない。そこで重要となるのが野党対策だ。与党入りに前のめりな維新や国民を引き込むのはさほど難しくはない。問題は立憲民主党だ。立憲を巻き込むことができれば、維新や国民は乗り遅れまいと進んで歩み寄ってくるだろう。
野党は徹底抗戦できない
財務省は民主党政権末期の12年に重要な布石を打っている。当時の野田佳彦政権は野党だった自民、公明との間で社会保障の財源に充てるために消費税を増税することで合意(3党合意)した。これをお膳立てしたのは財務省だった。