師を疑わないことが最速学習の第一歩

さて、冒頭に述べた通り、学ぶとはまねぶことである。PDCAはもはや言い古された手法だが、金言としか言いようのないものであり、OGISM(A)表はP&Gが試行錯誤の中から収斂させた結晶のようなメソッドだ。SAPS経営は、まさにこれらのメソッドをまねぶことから生まれた。

メソッドとは、日本語で言えば「型」。剣道などの武道には型の稽古があるが、優れたスポーツ選手はみな、きちんと型を習得している。型を習得する際に重要なのは、決して型を疑わないこと、自己流を排して徹底的に真似をすることである。世阿弥(ぜあみ)の言葉に置き換えれば、守破離(しゅはり)の守。師の教え、すなわち型を一切疑わず、徹底的に真似る。これは、学びのスタートにおいて、極めて重要なことだ。

取り返しのつかない「時」というものを社員に浪費させることは、企業による最悪の収奪である。一方、SAPS経営の実践によって、その週の最優先課題を抽出し、時間割を整理して最優先課題から着手し、それまで超えられなかったハードルをクリアできると、強烈な達成感を味わうことができる。それは、時の浪費と対極にある経験だ。

型の習得は一見遠回りのようだが、実は最速の学習方法である。週次の計画で社員を縛りつけるSAPS経営は、人間性を軽視しているように見えるかもしれないが、社員の「時」というかけがいのないものを絶対に無駄にはしないという意味で、人間尊重の最たる経営なのである。

※すべて雑誌掲載当時

(山田清機=構成 的野弘路=撮影)