12期連続で過去最高売り上げを更新するユニ・チャーム。一見すると元気のない国内市場でも、新しい概念を提案してはヒットを連発。驚くべきシェアを誇る同社の強さの秘密は、全社員必携の「社員手帳」にあった。
※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/13892)
ペットの“4大潮流”に乗る
代表取締役社長執行役員の高原豪久が指摘した成長分野のもう一方、ペットケア事業と同社の取り合わせは異色な気がしないでもない。しかし、考えてみれば、長寿社会では、ペットは人間にとって、いっそうかけがえのない存在だ。一緒に生活し、年を経ることで、共生の自覚と相互信頼が生まれ、生活にも張り合いが出る。
ユニ・チャームが、この分野に進出したのは86年。当時から比べると、飼い犬の平均寿命も14.2歳とほぼ倍になっている。ペットの市場では高齢化、肥満化、室内飼育化、小型化が進んでおり、これは“ペットの4大潮流”と呼ばれる。トイレタリー事業を担当する宇崎秀範は、このトレンドに商機を見つけたと話す。
「このペットの排泄ケア市場は最大254億円まで拡大します。理由は犬たちを取り巻く飼育環境の革新です。飼い主さんにしてみれば、食事や買い物にも連れていきたいのですが、問題になるのがマーキング、おしっこかけです。そこで、私どもではマナーという観点から『オス用おしっこおむつ』のあり方を見直しました」
ペット用紙おむつは、もともと高齢や病気で排泄の場所もままならない犬と猫のための商品だった。そのため、同社が「健康と清潔で、ペットの暮らし快適に」を事業理念に参入した01年は市場規模がまだ小さかったが、直近の13年度では当時の7倍強に拡大した。
宇崎たちの着眼は、そこでの新しい用途開発を狙ったものだった。欧州、とりわけドイツやフランスでは、人とペットの共生は驚くほど進んでおり、レストランなどにもリードなしでの同伴入店も可能だ。
宇崎と一緒に新しいコンセプトのおむつ開発に当たってきた寳嶋(ほうしま)隆志は、社会や飼い主の意識の高さ、躾の素晴らしさに感心した。そして彼は、外出のためのおしっこ用おむつの切り口をエチケットに求めることにした。この10月に発売される予定の新商品には「マナーウェア」という名前をつけたのである。
「ウェアという以上、文字どおり洋服感覚です。犬の腹に巻いた際の見た目にも心をくだき、スリムフィット形状で、色柄にも配慮しています。と同時に、外出時に持ち運びしやすいように、これまでは2つ折りだったものを3つ折りにすることで、さらにコンパクトにしました」