試作品は、去る7月下旬に東京ビッグサイトで開催されたペットフードやファッションアイテムの見本市「インターペット」に持ち込まれた。ここには16カ国・地域、250社が出展しており、犬同伴の来場者も多い。そこで粗相をしてしまう犬たちも少なくなく、試着キャンペーンで用意したサンプルがとても喜ばれた。
宇崎は「語録」の「三現主義」、すなわち現場、現物、現時点に言及。間もなく市場に投入というタイミングで潜在的ユーザーになる人たちの反応を確認できたことはプラスだったという。後は、そこで気づいた負の要素を改善していけばいい。ちなみに、開発の過程で寳嶋が指針にしてきたのは「変化価値論」。変化こそ新しい価値を生む。みずから変わることによって、自分自身が成長し、部門業績も上がるというものだ。
こうした個別の努力が功を奏し、ユニ・チャームは参入後20年で国内トップシェアを獲得している。その間、ペット関連総市場も着実に大きくなり、民間調査会社の試算では1兆4000億円余りになるという。
ただ、ここ2、3年、市場が停滞気味だというのが、同社取締役でペットケア事業の統括も兼務する森信次の実感だ。森は、ペットの数が頭打ちになり、小型犬化も進んでいるため、フードなどに消費の縮小が起きていると感じる。
「そこで、いま考えている次の打ち手が、成犬から高齢犬にシフトしたセグメント商品の開発と、宇崎、寳嶋が説明したマナーウェアという排泄面でのイノベーション戦略です。さらに、流通チャネルの再評価も必要でしょう。これまではホームセンターが中心でしたが、商品の細分化に伴い、最近流行の小型スーパーなどにも目を向けていく必要があります。そこに、停滞を脱する活路があるでしょう」
この際、森が重視しているのが「カテゴリー全体を伸ばす」ことと「お得意先には必ず先に伸びていただく」ということ。これも「語録」の言葉だが、森はそれを第一義に企画を進め、部下の指導に当たってきた。
「ですから、マナーウェアなど小売店への新規提案時には、他社とも共同で、消費者に訴求力のある陳列提案もしています。いつも私は、売り場から世の中を変えていこうと思っています。一度見て使ってもらえば良さは必ずわかってもらえます」(森)
同社には、ペットケア事業に限らず、ヘルスケア部門でも、周囲の関係者を大切にしていく姿勢がある。森はこれを“一気通貫”と表現するが、市場調査から商品開発、そして生産・販売まで一直線で進んでいく。