12期連続で過去最高売り上げを更新するユニ・チャーム。一見すると元気のない国内市場でも、新しい概念を提案してはヒットを連発。驚くべきシェアを誇る同社の強さの秘密は、全社員必携の「社員手帳」にあった。
おむつではない。パンツだ!
「それまでじっと私の説明に耳を傾けていたモニターの方が、サンプルを見せた瞬間、『絶対に欲しい!』という顔をされることがあります。そして、自分から『実は困っていました』と話し出す。そのときですね。これはいけるなと確信できるのは」
こう話すのは、ユニ・チャームでヘルスケア製品のマーケティングを担当する斉藤耕介だ。彼が手がけてきたのは、この秋にリニューアル発売される大人用紙パンツ「ライフリーうす型軽快」。売りは高齢者自身で、あるいは家族などの簡単な助けを借りてスルッとはけること。つまり、おむつではなく、あくまでもパンツなのだ。
大人用紙おむつというカテゴリーでとらえると、国内の市場規模は2013年で約1680億円。前の年から5%伸びている。高齢社会が急速に進み、紙おむつの需要は一段と高まると見ていい。そしてその際に重要なのは、寝たきりになってから使用する紙パンツではなく、寝たきりになるまでの期間を長く維持し、自立を促すことができる商品。だから斉藤は、このパンツをはいて積極的に外出することも勧める。
商品化にこぎ着けるまでには、徹底した現場観察が繰り返された。高齢者ケアイノベーション開発部も含めた通称“パンツチーム”に斉藤も加わり、およそ50世帯のユーザー宅を訪問したのだ。そこでは、相手のプライバシーにもろに踏み込む。事前のアンケート調査だけでは見えてこないシーズがそこにあるからだ。