「実際にトイレではき替えているところを見せてもらいます。自分だけでトイレに行く人もいれば、介助してもらう人もいる。そのプロセスを見て、ビデオにも撮ります。そこで気がついたのが、便座に腰掛けてパンツをはくときに足の親指が引っ掛かることと、おしりのところでつかえてパンツを引き上げるのに苦労するということでした」
このとき斉藤は、観察する相手の立場になりきる。だからこそ、見えてくるものがある。それを斉藤は“インサイト”と呼び「インサイトの発見こそ、無から有が生まれた瞬間。いつもここが一番苦労しますし、勝負どころです」と語った。
紙パンツ引き上げ時の不便さというインサイトに気づいたチームスタッフは、漏れを防ぐギャザーやウエスト部分のゴム生地をやわらかくすることで、はく時間を3秒近く短縮。引き上げる際に使う力を23%も減らした。
こうしたがんばりの拠り所として斉藤が挙げるのが、ユニ・チャームの企業理念「NOLA&DOLA」だ。耳慣れない言葉だが「Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities」の頭文字を取ったものである。すなわち「赤ちゃんからお年寄りまで、生活者をすべての領域で束縛から解放し、より多くの夢をかなえるために我々は存在する」という決意を表したものだ。
「つまり、お客様が困っていることを発見して解決してあげたいということ。やはり、いつまでもトイレで排泄できるということは本人の自尊心を守り、アクティブに生活し続けるために大切になってきます。そこをクリアしてもらうのが、この紙パンツの使命ですね」(斉藤)