高齢者の残存能力を引き出せ

グローバルマーケティング本部ヘルスケアSBU部長 木内 悟氏
座右のユニ・チャーム語録●「尽くし続けてこそナンバーワン」 常に最高の満足をお届けできるように尽くし続けてこそ、ナンバーワンになれる

斉藤の上司で、ヘルスケアSBU部長を務める木内悟も、大人用排泄ケア市場が新たなステージに入ったと考えている。そこでいかに新しい切り口の製品を創造し育成していけるか……。キーワードは“健康寿命”の1日でも長い延伸だ。

同社は1987年に大人用紙おむつを発売。軽い尿漏れといった比較的初期の症状も含め、使用する人の運動機能に合わせて選べるラインアップを提案してきた。結果、現在では店頭シェア50%超を獲得している。その原動力になったのが、95年にマーケットに投入した「リハビリパンツ」だったと木内は振り返る。

「病院や福祉施設では『リハパン』が紙パンツの代名詞のようになっています。介護の現場に自立というコンセプトを提案したことが非常に受けたわけです。それまで日本では、丁寧な介護がいいとされ、安静にさせすぎ、寝たきりの高齢者が増えてしまうという実情がありました。しかしそうではなく、高齢者自身すら気がついていない残存能力を引き出すほうが本人にも家族にもいいと訴えたのです」

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売上高・営業利益の推移

実際、同社の売上高・営業利益の推移をグラフで見ると、90年代半ばあたりから右肩上がりが目立ち、14年3月期の売上高6000億円につながっている。おそらく「リハパン」の貢献も少なくないに違いない。それにしても、P&Gや花王といったライバルを抑えて、この分野でトップになった理由は何なのか……。

「ポイントは薄型化。それと尿とりパッドと一緒に使うことで、軽い失禁なら気にしないで外出もできる。すると気持ちも前向きになるという相乗効果を発揮します。こうした商品は、お客様の隠れたニーズとしてはずっとあったと思います。それを使いやすい形にできたことで、他社に一歩先んじたということでしょう」(木内)

この木内の言葉は、社内で語り継がれてきた「ユニ・チャーム語録」にある「尽くし続けてこそナンバーワン」の具現化だ。常に最高の満足を届けられるように尽くし、前人未踏の満足を創造し続けること。「語録」を胸に、いつも木内は心がけている。

同社では、すべての社員に「ユニ・チャームウェイ」と名づけたシステム手帳を配布している。業務中は必携を義務づけていて、会議、チームの打ち合わせはもとより、上司と部下の指導・コミュニケーションに際しても共通の価値観を醸成するために役立てられるという。

綴じられた冊子のなかで最も頻繁に活用されているのが「語録」である。ユニ・チャーム社員として身につけるべき思考特性や行動規範が列記されている。同社の強みは、そうした原則が社員一人ひとりに浸透し、確かな現場力となっていることだ。いわば同社の終始一貫して変わらない“不易”の部分ということができる。