この成功を世界でも
現在、ユニ・チャームは高原自ら現地に密着して、海外展開を加速させており、売上高の6割を海外で稼ぐ。すでに高齢化が始まっているアジアでも、これまでに見てきた日本で成功したビジネスモデルは、応用されていく。「その際、bes of bestを尽くすという企業風土を守っていくことや、その風土の中で人材を育てていくことが重要」として、高原は日本のヘッドクオーターの役割の重さを強調する。
もちろん、こうした社内風土は一朝一夕にはできない。まして、企業の成長発展戦略をともに担える人材を育成するとなるとなおさらだ。
高原が目指す強い組織とは、「金太郎飴・桃太郎軍団」だという。これは決して、社員を同じ型にはめるとか、役割を固定化しようというものではない。金太郎飴のように、組織が同一の目的を強く共有すること。桃太郎のもとに集まった犬、猿、雉のように、それぞれが忠実、知恵、情報収集といった得意技を駆使できる集団になることだと解説する。
「それにはまず、しっかりと私の、あるいは上司・先輩の一挙手一投足を真似てほしい。そのなかから取捨選択して、自分のものにしていくしかありません。私は、人は勝手に育つものと考えています。会社にできることは、成長を促す良い習慣を仕組みにすることくらいです」
ユニ・チャームの人材に関する考え方の根底には人間・個人尊重の思想がある。だからこそ、社員が意気に感じ、社会発展のために働くことにつながるのだろう。当面の目標達成に向け、経営陣の意思と現場社員の知恵が振り子のように行ったり来たりして、着実に業績を上げていく。高原はこれを「共振の経営」と定義する。
国内市場での成功の原動力となった同社のそうした企業風土と組織力は、海外でも競争の源泉として機能するだろう。そこでも共振の現象が起こっているはずだ。
(中敬称略)