海外に行った時も楽しめるゴルフ場があるといい

太平洋クラブに入会した会員は海外の名門ゴルフクラブで会員並みの料金でプレーできる。

海外クラブとの提携を考えたのは現社長の韓俊(ハン シュン)である。

「半世紀前に当時の太平洋クラブが会員を募集した時のパンフレットを見たら、『環太平洋に百のコースを作る』とありました。それもゴルフだけではなく、スキー場、ヨットクラブ、ホテルも作っていくという壮大な構想でした。むろん、その通りに私ができるとは思いませんでした。でも、会員のことを考えると、国内だけでなく海外にも利用できるところがあればいいと思ったのです。

会員にとって海外へ行った時、自分のクラブのように楽しめるゴルフ場があればいいんじゃないか……。それで世界を回って名門ゴルフクラブと提携することにしたのです」

海外の高級クラブとの提携に奔走したのは取締役の野中児郎じろうだ。野中は太平洋クラブに入る前、香港で金融ビジネスに従事していた。その時、野中はクリアウォーターベイという名門ゴルフクラブのメンバーだったのである。

写真提供=太平洋クラブ
太平洋クラブの御殿場コース(静岡県)

太平洋クラブのブックを支配人に見せると…

太平洋クラブを買収した後、韓俊は野中と一緒に香港出張をする機会があった。海外提携を考えていたこともあり、彼はクリアウォーターベイを訪れ、野中と一緒にコースを回った。すると、レストランで旧知のスコットランド人支配人と出くわしたのである。

韓俊が以前、シンガポールに出張した時、セントーサ島にある「セントーサ・ゴルフクラブ」でプレーをしたことがあった。その時に挨拶に出てきた気のいい男が香港のクリアウォーターベイに移っていたのだった。

韓俊と支配人は親しげに会話をした。支配人は大声で笑い、雰囲気は和やかになった。

韓俊は「あれを」と目で合図をした。野中がすかさず英文も入った太平洋クラブの写真集のようなファクトブックをその場で開いて見せた。支配人は「素敵なデザインですね」とファクトブックをほめて、ページを開き、コースの写真に見入った。

スコットランド人支配人の様子を見て、韓俊は「もし、できることならこの素晴らしいクラブ、クリアウォーターベイと太平洋クラブは提携したいのです」と投げかけた。支配人はウインクして「上司と相談します」と答えた。