娘からの国際電話で離婚を決意

そんなある日の早朝、オーストラリアに留学していた娘から国際電話があった。西崎さんが友人と撮った写真を送ったところ、すぐに連絡してきたのだ。

娘や息子からの言葉に背中を押されることは多かった。(撮影=市来朋久)

「娘は泣きながら、『ママ、離婚して!』と言うのです。『なんで?』と聞くと、『ママがめっちゃ瘦せとった。ご飯は食べてる? ちゃんと寝てないでしょう』と。私が送った写真を見て心配になり、彼女も寝られずにかけてきたのでしょう。ママは大人だから外へ出ていくことができても、弟は中学生だから家と学校と塾しか居場所がない。ママが帰るまで家でおびえながら待っている弟を思うと、自分はオーストラリアで楽しく過ごしているのが申し訳ないと言う。私はもうこの生活を続けるのは無理だと心を決めました」

夫に「離婚したい」と伝えると、「おまえが出ていけ!」と言い出す。すると息子が「俺も行く」と言い、口論になるばかりだった。やむなく家賃の安いアパートを探したが、高校受験を控える息子の環境を変えることも案じられた。

悩み抜いても答えが出ないまま、一年半ほど時が経ってしまう。とりあえず家のローンを引き継いでここで暮らしたいと、夫に話してみた。すると激怒した夫と大げんかになった。

息子が初めてこぼした本音

その後、両家の親と仲人を交えての話し合いがもたれた。夫は「おまえには20年間専業主婦で3食昼寝付きの生活をさせてやったのに、最後にこの仕打ちはどういうことだ!」と反論するが、それが捨てぜりふに。2013年4月、20年間の結婚生活が終わる。西崎さんが46歳のときだった。

その当日、西崎さんは息子が通う中学まで迎えに行った。離婚したことを伝えたときの彼の言葉が深く心に刻まれているという。

「息子は号泣して、『俺はあの家が嫌いやった』と初めて本音を漏らしました。ママとパパはいつも自分だけが大変なのだと相手の悪口しか言わないと。それまで絶対に涙も見せなかった息子がその場で泣いたのです。私がひたすら謝ると、『もういいよ、謝らんでも。終わった、終わった』と逆に慰められて……」