夫の暴言、暴力におびえて暮らす日々

自信を失くした夫は不機嫌になると暴言を吐いたり、手をあげたりすることもあり、おびえながら暮らす日々。それでも子どものことを思うと、すぐには踏み切れなかった。

「私一人で生活を支えられるかという自信はなかったし、やっぱり世間体も気になってしまう。本当に苦しいことはママ友にも言えないので、必死で隠そうとしました。それまでは息子の友達もよく家へ来ていたけれど、夫が家にいることを知られたくなくて、「もう友達は呼ばないで!」と言っていたんです」

家の中が荒んでいくなか、西崎さんは生活のために働こうと決意。20年も専業主婦をしていたので正社員で雇ってくれるところはなく、やっと決まったのは時給800円のアルバイト。ヨガスタジオの受付という仕事だった。月50時間のパート代に貯金を崩し、実家の親からも助けを得てどうにか家計を支えた。

正社員になった妻に、失業中の夫は「いい気になるなよ」

「私にとっては仕事で外へ出ると気が楽だったし、重苦しい空気の家から逃れるいい口実でもあったのです。仕事では結果も出るから、自分を認められるのが嬉しくて。半年ほどで社長から正社員になって店長をやらないかと声をかけられたのですが、夫は『いい気になるなよ!』と。あの頃は仕事を終えて戻ると、マンションの部屋に電気がついているのを見るだけで吐きそうになるほど、家へ帰るのが嫌でしたね」

仕事が遅くなる日は、中学生の息子が洗濯物を畳んでくれたり、食後の食器を洗っておいてくれたり、疲れている母を気遣ってくれた。夫が怒鳴るとかばってくれ、それに対してまた夫が怒る。親子げんかがエスカレートしないよう、毎日ひそかに包丁を隠して仕事に出ていたのだと西崎さんは漏らす。