好意を示されれば「期待を裏切ってはいけない」と思う

ゲストにとっては、ラジオのスタジオはアウェイな場ですし、「今日話すのは、どんな人なんだろう……」と身構えているもの。そのモヤモヤとした不安を先出しの好意で少しでも和らげるのが、お招きした側の礼儀です。

以前、母校の学生新聞の取材を受けたとき、学生記者さんが言ってくれた言葉を今でも覚えています。

「中学受験時代に通っていた塾の行き帰り、母が運転する車の中でいつも秀島さんのラジオを聞いていました。飾らないざっくばらんなお話に『どんな人なんだろうねえ』と、母と声を上げて大笑いしていました。憂鬱ゆううつなストレスも吹き飛びましたよ!」

これはうれしかったですね。社交辞令ではなく具体的なエピソードと一緒に、「あなたに好意や関心を持っています」と伝えられたら、こちらもその気持ちに応えたい。「期待を裏切ってはいけない」、という思いも湧いて、いつも以上に丁寧に話していました。

「お会いできてうれしいです」でも十分ですが、この記者さんのように具体的なエピソードと思いを伝えられると、初めから会話に弾みがつきますし、話題も広がります。

「先出しの好意あいさつ」が“あなた”と“私”の距離を一気に縮めてくれることもあるのです。だからこそ、初対面の人はもちろん、久しぶりに再会した人、なかなか会えない人にも、会ったらすぐさま気持ちを伝えましょう。

こういうことに遠慮は無用。照れくさいし、恥ずかしいし、と理由はどうあれ好意の言葉を出し惜しむ人が、人に好かれることはありません。

“会ったら話したいことメモ”をつくっておく

ただ、普段あまり自分の気持ちをストレートに口にしていないと、いざ相手と対面したとき、どぎまぎして、なかなか伝えられないもの。

秀島史香『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)

約束をしているなど、あらかじめ会うことがわかっている相手については、これまで相手に対してどんな感情の動きがあったのか、個人的にどんなエピソードがあったか、今回会うことで何が一番楽しみなのか、まず何を話したいのかなど、思いを巡らせてみてください。

頭がごちゃごちゃになってしまって、「結局もう出たとこ勝負でいいや!」と思っていても、現場でうまくいくことはまずありません。事前に頭の中を整理するために、手帳にでもスマホにでも、簡単にメモしておくのもよいでしょう。もちろん現場では見られませんが、緊張もプレッシャーも軽くなります。

憧れの人、初対面の人を相手にすると、なかなか普段の自分ではいられません。デートでも、プレゼンでも、会食でも、面接でも、「どうしよう、頭の中が真っ白で何から話せば……」となる前に、どこにいても気軽にできる下準備です。

「なぜかこの人は話しやすいな」という人、あなたのまわりにもいませんか。次回会うときに、よーく観察してみてください。会えてうれしい! という気持ちを言葉や表情などで伝えてくれていることに気づくはずですよ。

(構成=小川由希子)
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