ラジオはなぜ「聞いているだけ」なのに疲れないか
ラジオDJの多くは、聞いてくれている人の状況に合わせた声や話し方、話題の順番などを意識しています。もちろん、番組の制作スタッフも、それを綿密に考えて内容を構成しています。
長時間心地よく聞いていられるのは、聞き手に向けて、徹底的なおもてなし、つまり「聞きやすさ」を心がけているから。言い換えれば、ラジオ番組ならではのメリハリ、「聞き流せる」余白が意図的につくられているからです。
ゆったりしたトークが中心の番組、音楽番組、芸人さんがしゃべりまくる番組、ニュース番組や社会問題に切り込む番組などさまざまありますが、程度の差こそあれ、どのように「余白」を作るかは、しっかり工夫されています。
話には“集中しやすいサイズ”がある
「聞き流される前提でしゃべるって……いいの?」と思う方もいるかもしれませんが、常に集中して聞いていないと、たちまち内容がわからなくなるのは聞き手にやさしくありません。
加えて、聞いて疲れない番組は、「中途参加さん」に向けても、しっかりとケアしています。DJが番組内いたるところで「今日のテーマは○○で、先ほどこんなメールをご紹介したのですが、こんな反響があって」と、これまで話した情報や話題の交通整理をさりげなく徹底しているんですね。
途中から聞き始めた人が楽しめないものは、最初から最後まで聞いてくれている方にもやさしくありません。なぜならオンエア中ずっと、集中することを求めてしまうから。1秒たりとも聞き逃せない……そんな番組はそもそも毎日気軽には聞けませんよね。
ラジオの生ワイド番組の多くは、だいたい3時間を目安に構成されています。その中に、ひとつの話題を深く掘り下げるコーナーがあれば、気楽なフリートークの時間があったり、メール紹介や交通情報、天気予報があったり。聞いている側が意識しなくても、ふっと気を抜いて休憩できる時間と、「ここは大好きなコーナーだ」と、ぐぐっと身(耳?)を乗り出して聞き逃すまいとする時間が両方用意されています。
集中力のスイッチがオンになったりオフになったりすることで、「長時間耳を傾けている」という意識が薄れ、聞きやすい一口サイズの話が代わる代わるやってくる感覚になります。
番組中、DJがずっとしゃべっているようで、実は、一人で話す部分は、ひとつのテーマで3分程度。なので、途中、聞き流しても話を理解しやすいし、話題もリズムよく変わっていくので、飽きずに楽しめます。