人材投資しない企業は生き残れないというムードを醸成

――企業の人材投資をどのように後押ししますか。

人材投資に乗り出している企業やその投資家など、同じ危機感を抱いている人同士で集まりをつくって、具体的な取り組み事例や対策案などを発信していく予定です。また、人的資本経営を行うための具体策を掲載した「人材版伊藤レポート2.0」も作りました。

これは、ROE経営の機運を高めた「伊藤レポート」で知られる一橋大学の伊藤邦雄先生の手によるものです。こうした発信を継続しながら、企業の方々と人材投資のアイデアを共有していきたいと考えています。

経営者の方々には政府の余計なお節介だと思われるかもしれません。実際そうなのですが(笑)、人材投資は産業界の未来のために欠かせないのです。そしてその意義を広めるには、ルールをつくるよりムードを変えていくことが重要だと思っています。

日本人の国民性から考えると、行動変容を促すうえでは「皆がそうしている」という環境をつくるほうが効果的でしょう。事例が増えるように後押しをして、かつ実践事例もどんどん発信する。そうして、人材に投資しない企業は生き残れないというムードを醸成していきたいですね。

撮影=プレジデントオンライン編集部
「人材投資の意義を広めるには、ルールをつくるよりムードを変えていくことが重要だ」と話す平井氏

自分の会社は若い人たちにどう評価されているか

──日本企業の内部からは「変わりたくても変われない」という愚痴をよく聞きます。

まずは、いま自社が新卒採用市場でどう評価されているか、そして採用した若者が自社からどれだけ逃げていっているかを知る必要があると思います。その現状を知ったうえで「2030年、当社は生き残れているだろうか」「2050年、当社はどうなっているだろうか」と想像してみてください。

その未来の世界に、わが社は存在していないかもしれないと思えてくるのではないでしょうか。では、それを防ぐためには何をするべきか。このように順を追って考えていけば、おのずと答えが出てくるのではと思います。

中長期計画を立てるとき、もう少し先まで見渡してみれば、取るべき手段の中に必ず人材投資も入ってくるでしょう。すでにこの点に気づいている経営者も多いはずです。ぜひ行動に移して、そして社員に強力なメッセージを発信してください。