古い薬を集めて販売認可した薬とも言える

市販の風邪薬の1つ1つの成分は、安全性を優先するため病院で処方される総合感冒薬より少なめになっています。医療機関で処方される総合感冒薬の各成分ももともと非常に少ないものですが、市販薬はそれよりさらに少なくなっているのです。そのイメージをカバーするためなのか、多くの種類の成分を混合処方してあります。

また、副作用を抑えた比較的新しい成分の薬は、市販薬には認可されていない背景もあり、古い薬を集めて販売認可した薬と言ってもいいのかもしれません。

コロナ禍以降、「セルフメディケーション」がキーワードとなり、風邪にかかった際には病院を受診するのではなく、薬局で市販の風邪薬を買う傾向が強くなりました。国も税制や事業支援の政策として推進してきました。これは良い方向に向かっていると言えるのでしょうか。

処方薬と市販薬のどちらもデメリットしかない

たとえば保険診療薬のPL顆粒と全く同量同成分の入った「パイロンPL顆粒Pro」という商品が2021年8月に市販されるようになりました。病院に行かずとも、同様の薬が手軽に手に入るのは患者さん側からすると助かるとの見方もできますが、ここまで説明してきた治療効果という面では疑問が残ります。

総合感冒薬自体が、風邪症状を軽減する効果のないことが明らかになっているからです。市販の風邪薬と病院処方の総合感冒薬はどちらがよく効くのか? という質問をよくされますが、前掲の薬の場合は、同量同成分なのですから、効果の大きさを比較する問いそのものに意味がありません。他の市販薬も同成分である限り同じです。しかもいずれの薬も、薬効がないうえに副作用はあるという残念な答えになります。

海外の多くの国ではすでに、6歳未満に総合感冒薬などの風邪薬の使用は警告・禁止しているケースがたくさんあります。米国では、小児や成人の風邪症状に対しての総合感冒薬、また18歳未満に対してはコデインを推奨していません。