風邪をひいたら、どうやって治せばいいのか。耳鼻咽喉科医であり、外来感染症診療のスペシャリストである永田理希さんは「市販の風邪薬は『早く飲んで、早く治す』などと宣伝しているが、効果よりもデメリットのほうが大きい。特に子供は風邪薬を飲まずに、ゆっくり静養して治したほうがいい」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、永田理希『間違いだらけの風邪診療 その薬、本当に効果がありますか?』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

自宅の部屋で薬を飲んでいる女性
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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もっとも多くの薬が処方されているのは風邪

世界で一番多い感染症は何だと思いますか? それは、日本で医療機関に受診される一番多い感染症でもあります。

答えは、風邪です。海外で医療機関に風邪症状で受診すると数万円かかりますが、日本ではクリニックや病院の開業時間であればどこでも好きな医療機関を受診でき、医療費は海外に比べとても安く済みます。成人では3割負担、高齢者では2割負担、後期高齢者では1割負担(一部は2割負担)、小児に関しては自治体が負担するため無料であり、診察や検査、そして、処方薬などすべての恩恵を患者側は受けることができます。

さて、感染症にかかって受診したら、治療のための薬を我々は医師から処方されることになりますが、日本の外来診療の中で一番多くの薬が処方されている感染症は何だと思いますか?

この答えも、風邪です。風邪には、昭和の頃から対症療法がベストな治療とされ、それぞれの症状に対する薬が選択処方されています。風邪はウイルス性感染症であるため、鼻炎、咳、痰がらみ、のどの痛み、発熱、頭痛など多くの症状が出ます。症状ごとに薬を出していけば、当然多くの処方薬が出される結果となります。

風邪ではなく細菌が原因の感染症の場合には、原則1感染1臓器に症状が出ます。のどに細菌が感染を起こせば、鼻炎や咳がほとんどなく、のどだけがひたすら痛くなり、肺に細菌が感染を起こせば、鼻炎やのどの痛みはほとんどなく、呼吸数が増えて苦しくなり、咳が出ます。細菌性感染症のメインの治療薬は、抗菌薬(いわゆる抗生物質)となります。