※本稿は、スティーブン・R・ガンドリー『死ぬまで若々しく健康に生きる 老けない食事』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、川岸史訳)の一部を再編集したものです。
がん対策に最適な食品とは何か
空腹を感じずにがん細胞を抑えるには何を食べればいいのか? がんと闘う特異な性質を持つ食品がある。それは以下のようなものだ。
●外因性ケトン体
インスリン値が低く、糖質・タンパク質の摂取量が少ないと、体内に蓄積された脂肪がケトン体(※)に変換されることはご存じだと思うが、すでに作られたケトジェニック(糖質制限)食品を摂取してもよい。
※空腹時や睡眠時などに脂肪酸が燃焼する時、肝臓で作られる物質
いくつかの植物性脂肪には、ケトン体を作ってエネルギー源とする脂肪が含まれている。たとえば、中鎖脂肪酸(MCTオイルに含まれる)は、ほぼ完全にケトン体に変換することができ、ミトコンドリアの理想的な燃料源となる。
固形のココナッツオイル(セ氏21度以下だと固形となる)には、中鎖脂肪酸が約65%も含まれている。また、ビタミンEのトコフェロールとトコトリエノールを豊富に含み、MCTを約50%も含むレッドパームオイルも、ケトン体の生成に適したオイルだ。パームオイルはレッドパームオイルとは異なる上、パームオイルの生産は森林破壊と関連しているので間違えないように。
酪酸は、腸内環境を整えると腸内細菌の酪酸菌が作り出す短鎖脂肪酸で、バターにも少量含まれており、ケトン体を作る材料となる。しかし、市販の乳製品にはカゼインA1が多く含まれているため、通常の牛乳バターやグラスフェッドの生乳バターよりも、ヤギや水牛のバター、ギー(タンパク質を含まない澄ましバター)の方が、ケトン体前駆体の摂取に適している。だが、バターには酪酸があまり含まれていないことは覚えておこう。
だが、ケトン体濃度を上昇させる脂質源をどれだけ摂取しても、糖質、タンパク質、脂質の多い食事(欧米型の食事)から長寿パラドックスプログラム(死ぬまで若々しく健康に長生きするためのプログラム)に移行する際には、エネルギー源として外因性ケトン体を使うのが最適となる。
つまりハンバーガーやベーグルを食べて、脂肪の形でケトン体をたくさん摂取してもあまり意味がないというわけだ。私たちは、いつもインスリン値が高く、「ラブハンドル」(腰回りについた脂肪のこと)をケトン体に変換する能力を阻害している。
こうした食事におけるケトン体濃度を上昇させる脂質源は、移行期の失敗を防いでくれるが、長期的には必要なくなる。