「太りにくい体」に変わるには、どうすればいいのか。内科医の奥田昌子さんは「肥満しやすいかどうかは、母親のお腹の中にいるときの環境や乳児期の栄養状態が影響すると考えられている。だが、成人後の生活習慣を変えることで、体質を変えることもできる」という――。

※本稿は、奥田昌子『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(講談社ブルーバックス)の一部を再編集したものです。

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「肥満しにくい体」を手に入れる4つの関門

現代型の高脂肪、高カロリーの食事は、人が近代まで摂取していた食事とは質が大きく異なります。生きものは環境が変化しても絶滅をまぬがれることができるように、多様性という戦略を編み出しました。同じ遺伝子でも一部が微妙に異なる遺伝子多型、いわゆる遺伝子のタイプの違いがその一つです。また、遺伝子のスイッチがどう入るかも人それぞれで、ここから体質の違いが生まれます。

けれども、近代以降の生活の変化は人が適応できる速度を超えていました。その代表が食の欧米化であり、近代化にともなう運動不足であり、その結果もたらされた肥満率の上昇です。

生活習慣の問題が大きいとはいえ、背景にある遺伝子の状態を含めて考えると、現代人が「肥満しにくい体」を手に入れるには、少なくとも4つの関門を無事に通過する必要があると考えられます。

人間の「設計図」は受精卵ができる瞬間に決まる

最初の関門は受精卵ができる瞬間に訪れます。このとき、どんな「設計図」を持って生まれるかが決まるからです。遺伝子のタイプは生まれつきのもので一生変わりませんし、両親、さらには祖父母の生活習慣や経験が遺伝子のスイッチを変え、そのまま子どもに伝わることがあります。

とはいえ、仮に基礎代謝が低くなるタイプの遺伝子を持って生まれた人も、若いうちは基礎代謝が低くないという話があります。こういう人の基礎代謝が実際に下がるのは40歳を過ぎてからで、しかも必ずしも太るとは限らないようです。

2017年に発表された研究結果(*1)によると、遺伝子が肥満に与える影響は30%に過ぎず、残りの70%は生活習慣で決まります。

40代になると基礎代謝が下がり始めるのは、積もり積もった不適切な生活習慣によるものでしょう。太りやすい体質を自覚して生活習慣に気をつけることで、多くの人が遺伝によるハンデを乗り越えているのです。