玄米を2カ月食べると体重とBMI、内臓脂肪が減少

すると、白米を2カ月食べたあとで玄米を2カ月食べると体重とBMIが減少し、インスリンの効き目がよくなるとともに、総コレステロール値と悪玉コレステロール(LDL)値が改善しました。さらに、玄米を食べているあいだだけ内臓脂肪が明らかに少なくなった一方で、皮下脂肪の量は変わらなかったこともわかりました。図表1のグラフは体重の変化をまとめたものです。

内臓脂肪は皮下脂肪とくらべてやっかいな脂肪で、生活習慣病やがんを引き起こします。玄米は有害な内臓脂肪に集中的に働きかけてくれるわけです。

ところが、玄米を2カ月食べたあとで白米を2カ月食べたグループは、体重が増加しただけでなく、玄米を食べているあいだに起きた望ましい効果が消えて、実験開始時の状態に戻ってしまいました。

最近は玄米の健康効果が知られるようになり、産地や栽培方法にこだわって購入する人もいます。しかし歴史を振り返れば、精米技術が進歩した江戸時代以降、玄米を含む雑穀は白米より軽んじられる傾向が続いていました。

そんななかでも、「いや、健康のためには玄米を食べるほうがよい」という思想が受け継がれ、実践していた人が少なくありませんでした。医学的な知識はなくとも、玄米と白米のどちらを食べるかで体調が違うことを肌で感じていたのでしょう。

食物繊維が多い玄米はとにかく健康に良い

肥満防止にはγ-オリザノールだけでなく、白米とくらべて玄米に6倍多く含まれる食物繊維も大きな役割を果たします。その主役は先ほども述べたように、食物繊維を分解してできる短鎖脂肪酸です。

奥田昌子『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(講談社ブルーバックス)
奥田昌子『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(講談社ブルーバックス)

短鎖脂肪酸には他にも健康効果があり、大腸でのカルシウム、マグネシウム、鉄の吸収を促すとともに、肝臓でコレステロールが作られるのをおさえ、さらには大腸の粘膜に発生した異常な細胞にアポトーシスを起こさせて、がんになりにくくすると考えられています。アポトーシスは細胞死ともいい、細胞を破壊して体を守るためのしくみです。

妊婦さんが食物繊維をしっかり摂取すれば子どもの肥満防止に役立つ可能性があるだけでなく、東アジア人は食物繊維を多く摂取すると糖尿病の数値が改善し、日本人は心臓病や高血圧を発症しにくくなります。

日本で食物繊維の摂取が減った大きな原因が、玄米や大麦、雑穀に代表される穀物をあまり食べなくなったことです。日本人の腸には諸外国の人とくらべて善玉菌が多くいるのに、その餌となる食物繊維が不足していたら善玉菌も働きようがありません。

*1 Genome-wide association study identifies 112 new loci for body mass index in the Japanese population, Akiyama M et al., Nature Genetics, 49, 2017
*2 Maternal gut microbiota in pregnancy influences offspring metabolic phenotype in mice, Kimura I et al., Science, 367(6481), 2020
*3 The Impact of Human Milk Feeding on Long-Term Risk of Obesity and Cardiovascular Disease, Singhal A, Breastfeeding Medicine, 14(S1), 2019
*4 Role of DNA methylation in the regulation of lipogenic glycerol-3-phosphate acyltransferase 1 gene expression in the mouse neonatal liver, Ehara T et al., Diabetes, 61(10), 2012
*5 Impact of brown rice-specific γ-oryzanol on epigenetic modulation of dopamine D2 receptors in brain striatum in high-fat-diet-induced obesity in mice, Kozuka C et al., Diabetologia, 60(8), 2017

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