鼻腔粘膜に侵入したウイルスが粘膜に存在する肥満細胞に作用して、ヒスタミンが分泌され、それがH1受容体に結合し、鼻炎症状が出る、という仕組みです。
風邪による鼻炎の誘因をヒスタミン分泌と想定して、ここをブロック(遮断)しようとするのが「抗ヒスタミン薬」、いわゆる鼻炎止めとなります。理論上は、花粉症などのアレルギー性鼻炎と同様に効果が期待できそうです。実際の効果はどうなのでしょうか?
わずかに症状を軽減させる可能性はあるかもしれないが…
「抗ヒスタミン薬」には、第1世代、鎮静性第2世代、非鎮静性第2世代の3つがあります(図表2)。この中で第1世代抗ヒスタミン薬は、はな風邪症状の初期の1~2日だけわずかに軽減する可能性があるかもしれないとされ、眠気や口渇などの副作用を抑えた第2世代抗ヒスタミン薬では全く効果がないとされています。
結論として、抗ヒスタミン薬には実感できるような鼻炎症状軽減効果はない、ということになっています。
わずかな鼻炎軽減を期待できる可能性のある第1世代抗ヒスタミン薬d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®、ネオマレルミン®)の内服には、注意が必要です。副作用として、ウイスキー水割り3杯を飲んだのと等しいくらいの認知機能障害(判断・記憶・思考・理解・集中力などの低下)が見られ、他の第1世代や鎮静性第2世代の薬でも同等に考えた方がよいとされます。
また、第1世代の副作用には、眠気だけでなく尿閉(排尿できない)や眼圧上昇なども見られ、前立腺肥大症や緑内障の患者さんには禁忌の薬です。さらに高齢者においては不整脈や眠気など転倒によるリスクをさらに高めることにもなります。
つまり、メリットよりデメリットがはるかに勝ることになるのです。非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬は副作用が少なくなるように開発されていますが、そもそも風邪の鼻炎症状には全く効果がないため、服用するメリットがありません。
風邪の合併症として、特に乳幼児でよくみられる中耳炎は、鼓膜の奥にある部屋の中耳腔に炎症が起こり、滲出液がにじみ出てきて溜まってしまう病気です。これに抗ヒスタミン薬を投与しても、聴力改善効果や中耳に溜まった液を消失させる効果がないばかりか、貯留液が粘稠(ねばねば)になり治癒が遅れるともされ、風邪や中耳炎のある乳幼児への処方は控えた方がよいのです。