※本稿は、永田理希『間違いだらけの風邪診療 その薬、本当に効果がありますか?』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。
保険適用の「総合感冒薬」も要注意
市販の風邪薬には十分な効果がないどころか、認知機能障害を起こす可能性や、喉の粘膜を傷つけるなどデメリットが多いことが知られています。では、保険適用の「総合感冒薬」についてはどうでしょうか(図表1)。
保険適用というのは、医師が処方箋として処方できる薬ということです。「総合感冒薬」とは、感冒(風邪)の諸症状に対する複数の薬が配合されている薬のことです。一般的なものはPL配合顆粒、ピーエイ配合錠で、一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
薬の成分としては、風邪薬で眠気が出るイメージを刷り込むことになった第1世代抗ヒスタミン薬であるプロメタジンメチレンジサリチル酸塩(鼻炎止め目的)、解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(体重10~15kg相当のかなり少ない量)、解熱鎮痛薬サリチルアミド、覚醒作用のある無水カフェイン60mg(コーヒー1杯に含まれる90mgより少ない)の4種が配合された感冒薬になります。
海外では12歳未満への処方が2017年に禁止されている
他の保険適用総合感冒薬には、鎮咳効果の目的で気管支拡張薬、中枢性麻薬性鎮咳薬としてのジヒドロコデインリン酸塩などが追加されているものもあります。上記の成分は、効果よりもデメリットが勝るものとして知られています。
成人へのデメリットはもちろんのこと、米国をはじめとする海外では、12歳未満への処方が2017年に禁止されています。また、日本でも2019年に12歳未満への処方が禁止されました。海外では依存性が高いために禁止されている咳止め薬コデインが、日本では商品名に「コデ」とわざわざ入れて総合感冒薬として販売されています。
中でも総合6種を配合した感冒薬カフコデ®Nにはブロモバレリル尿素という成分が入っており、非常に危険な薬剤です。依存性の強い催眠鎮静薬であり、呼吸抑制作用も強く安全性が極めて低いもので、海外では発売が禁止されています。国内ではこの成分による急性、慢性ブロム中毒が起きています。ブロム中毒では、連続使用により体内蓄積され、中毒性も強く、倦怠感、吐き気、小脳失調、小脳症状、眼筋麻痺、脳幹症状などが起こります。