ボトムアップ型のデジタル改革を積極的に進めるべき

——GAFAがないことと関連しますが、日本では、デジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめ、デジタル化の遅れが顕著です。2021年には、警視庁が個人情報入りのフロッピーディスクを紛失したことが報じられ、話題になりました。テック面での遅れが賃金停滞に与える影響は?

賃金停滞にどの程度影響しているのかを測るのは困難ですが、デジタル化の遅れが主要因ではないと思います。

ただ、日本がデジタル化で大幅に後れを取っているのは、政府と民間セクターが招いた失敗です。もっと積極的な産業政策を取っていたら、現状はより良くなっていたことでしょう。

写真=iStock.com/Iuliia Alekseeva
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政府も企業もデジタル化の動きが遅すぎました。デジタル化が進まないと、(日本で遅れている)サービスセクターの効率性が高まりません。また、製造業も、情報システムの点で、顧客の企業や個人のデジタル化が進まないと最大限の可能性を発揮できません。

米国のデジタル革命はユーザー側から推し進められたものです。それがインターネット革命の本質なのです。米IBMや米通信大手AT&Tがトップダウンでできるものではありません。顧客のソフトウエア企業やメガバンクなどが、情報システムを使うための新しいアプリや方法を生み出し、ボトムアップで進んでいったのがデジタル革命なのです。

日本には、ボトムアップ型のデジタル革命が必要です。日本は、米国のように、デジタル革命の配当をめいっぱい享受するところまでいっていません。デジタル革命は生産性を高めますが、革命が道半ばであれば、生産性の上昇も道半ばです。

多くの人にプログラミングを学ばせてエンジニアを増やす

日本はデジタル化を進めるべきです。それも、かなり積極的に。それには、ソフトウエア・エンジニアを増やす必要があります。もっと多くの人々がプログラミングを学ぶべきです。

——リスキリング(学び直し・スキルの再習得)が重要になってきますね。

リスキリングについては、米国もさほど積極的ではありません。この問題では、労働市場に関する政策が非常に重要になってきます。その点では、欧州が日米より進んでいます。

テクノロジーで問題を解決するスキルを持ったソフトウエア・エンジニアを育成するには、大規模な研修が必要です。