「父親の権利を奪わないでほしい」

育休の一部を父親が取得してもよくなったのは1971年。父親だけが取ることのできる休暇が誕生したのは1991年で、当初その期間はわずか6日だった。その後、日数が徐々に延び、何回かに分けて取得可能にするなど、より利用しやすく制度が改定されていった。ちなみに1997年には、①と②のどちらか、あるいは両方の父親休暇の取得率は合計で43%。その約10年後の2008年には70%、現在は約80%になっている。

なぜここまで利用者が増えたのか。理由はいくつかあるが、一つは休暇日数が長くなり、柔軟性が高くなって取りやすくなったこと。もう一つは、1998年に当時の首相が自ら父親休暇を取り、2000年代前半には多くの閣僚も取得するなど、政治家が率先してロールモデルとなったことが挙げられる。

様々なメディアが、父親休暇を取ることは子どもと父親の関係づくり、そして良好な夫婦関係にも有効であるといろいろな場で強調し、社会の認識が変わったことも大きい。

今の30~40代の、私の周りの男性たちは「僕だって子どもの人生に関わりたい」「母親と同じぐらいの存在感を持っていたい」「父親の権利を奪わないでほしい」「子どもと一緒にいたい」と口にする。

フィンランドには「イクメン」という言葉は存在しない

フィンランドにはイクメンという言葉はなく、今や、男性が子育てをするのは当然だとされている。女性を「手伝う」のではなく、父親として主体的に子育てをすることが普通になっているのだ。ヘルシンキ市のアンケート調査でも最近は、子育てはパートナーと半々で平等に分担したいと願う父親が増えている。

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近年では、父親休暇を取った世代が管理職になっていることもあり、休暇取得は当たり前で、逆に取らない場合は、周りから不思議に思われるほどだ。もはや父親休暇がキャリアに影響することもない。

だが、それでもスウェーデンなど一部の北欧諸国と比べると、父親の育児休暇取得率はやや低い。特に長期間の休暇はまだまだ少ない。ノルウェーやスウェーデンは「パパクウォータ制」があり、父親が休暇を取らないと母親の休暇期間も減らされてしまう。対して、フィンランドは今のところ父親休暇の利用を義務としておらず、取らなくても何のペナルティもない。

自営業や不安定な職にある人、さらにパートナーの給与が十分でなかったりする場合には父親休暇が取りづらいこともある。今以上に取得率を増やすには、取得条件を緩和し柔軟性をもたせて取りやすくすることと、さらなる上司の理解が不可欠だ。国立保健福祉研究所(THL)の報告書は、部下が長期で休暇を取った際に職場内の仕事をどう調整するか、といったことから、管理職の教育が必要だと述べている。