フィンランドでは離婚後も共同親権が認められている

さらに、フィンランドは離婚やパートナーとの別れが非常に多いのだが、たとえ離婚・別居しても、親権を共同で持つことが多く、元パートナーと可能な限り協力しながら子育てを行い親の責任を果たすことが奨励されている。

堀内都喜子『フィンランド 幸せのメソッド』(集英社新書)
堀内都喜子『フィンランド 幸せのメソッド』(集英社新書)

もちろん、子どもに危害を及ぼす危険性がある場合などは共同親権は認められないが、2019年のTHLの統計では、93%の場合で共同親権が認められている。残りの割合は、6%が母親、1%が父親だ。普段は母親と一緒にいる子どもが、週末や長期休みの時だけは父親のもとで過ごしたり、習い事の送り迎えは別れたパートナーが担当したり、はたまた1週間ごとに父親と母親の場所を行ったり来たりするなど、やり方はそれぞれだ。

友人たちを見ていても、1週間ごとに独身生活が楽しめていいと言っていたり、父親の中には以前より密に子どもと関われるようになったと、共同親権を前向きに捉えている人もいる。

逆に、どんなに元夫婦の関係にわだかまりがあるからといって、片方の親が子どもを独り占めすることはできない。父親にも母親にも同等に子どもと関わる権利がある。それは別れた当人たちにとって悩ましい状況を生む場合もあるが、どちらもできるだけ割り切って大人であろうとする。

元夫と現在の夫が仲良く子育てに参加するのも珍しくない

また、親が離婚したからといって親戚との関係が疎遠になるわけではなく、これまでの関係もできるだけ大切にしていく。みんなが心穏やかであるわけではないだろうが、先日もフィンランドで友人のパーティーに出かけたら、ある女性の元夫と現在の夫が同席していて、その2人で仲良く話をしている姿に驚いた。

3人はいずれも出張が多い仕事についていたそうで、子どもが小さかった時はそれぞれ協力し合って3人で子どもの面倒を見ていたという。子どもを中心とした輪と考えれば皆が同席していても不思議はないが、日本ではあまり見慣れない光景なので少しドキッとしたのは事実だ。

ちなみに離婚した夫婦が養育費の取り決めをした場合、万が一支払いが滞ったら、国が養育手当を支給する。

【関連記事】
18歳の長男もロシアとの戦争に動員される…フィンランド在住の日本人女性がいま最も恐れていること
「年収1000万円→0円」子育てのため専業主婦になった40歳女性が13年後に直面した"厳しすぎる現実"
全国紙初の女性政治部長が「女性活躍社会なんて、絵空事でしかない」と言い切る深い理由
女性を虐げるのは男性だけではない…桐野夏生が「代理出産」で描いた"恵まれた女性"には見えない真実
1230kmのパイプラインも作ったが…ロシア依存だったドイツが超強気に急変した本当の理由