過去にとらわれず、社会を作り変えた天才たち

革命が進むと新しい成功者が生まれる一方で、淘汰される側はたまったものではない。既存勢力は、ありったけの力をふるって抵抗する。この強い反革命の抵抗にめげずに、なりふり構わず押し切ることができるのは、やはり忖度の苦手な「バカ者、若者、よそ者」たちである。彼らは過去にとらわれない。既存のしがらみにからめとられない。それらを無視して理想や思いを形にするために突っ走るのだ。

アップルはFoolishな個人が切り開いた。他人への配慮を欠いたアートの天才がいたからこそ自分の好きな独善的世界を作り上げ、帝国を築いた。

グーグルの天才たちが、若者らしい理想に走って検索技術を発明してくれたおかげで、インターネットの使い勝手は飛躍的に高まった。情報という神経質で微妙な世界に、無邪気で能天気な大学生ザックが「人と人のつながりの場」を作ってくれたからこそ、我々は断絶をカバーできるようになった。そして専門分野をやすやすと乗り超える門外漢=よそ者ベゾスが、社会の基本取引を、医療を、金融を、そして宇宙までをも作り変えようとしている。

こういう天才たちは、産業革命の申し子たちとは真逆の人たちである。産業革命期に強かった文化。規律重視、時間厳守、整然とした組織的協調、号令一下で正確な反復作業を長時間続ける忍耐強さ……。これと真逆の価値観。ブッ飛んだ構想力、組織ルールや規律にとらわれない柔軟な発想と強い自己主張、何でも可能にするワガママ行動、乗れば徹夜も辞さない突破力……。こうした資質の人々こそ、予想のつかない未来を切り拓く革命のリーダーたちである。

自由奔放な提案競争を実現する5つの要素

そして彼らを自由奔放な提案競争に駆り立てる環境(エコシステム)を作った国や地域が、情報革命の勝利者になることができる。それがシリコンバレーであり、その対極にいるのが日本だ。

あらためてシリコンバレーのエコシステムの構成要素を並べてみよう。

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〈場〉無から有を生み出す提案力、つまり0から1を生み出すコンセプト・メイキングやデザインの力に優れた天才を、世界から吸引して育てる知的バトルの場としての大学を囲むエリア

〈技術〉サポートするテクノロジー人材(CTOなど)と技術基盤。大学や大企業、政府系の研究所などに加えて、続々と生まれるハイテク・ベンチャーの集積

〈ヒト〉高い流動性の中で、プロの経営人材(CEO、CFO、CMOなど)が、大学(ビジネススクール)や大企業、ベンチャーなどから供給

〈カネ〉VCやエンジェル(ベンチャー成功者)、大学や企業、政府系機関から提供

〈制度〉規制緩和(例えば自動運転の容認など)、国がもつ技術の開放と民生移転(バイオ、宇宙など)などの支援。法制・税制のバックアップなど