カースト上位「美男美女」だけの時代は終わった

図表2は、TikTokでよく見られるようになったコンテンツジャンルを時系列でまとめたものだ(出てきた時期によって色や囲みでグルーピングしているが、厳密なものというより、特徴を大づかみするためのものと捉えてほしい)。なお、あくまでも出現時期をプロットしており、2022年現在でも2018年頃のジャンルが見られなくなったというわけではまったくない。

2018年頃の最初期は、自撮りやリップシンク(口パク)、ダンスといった、いわゆるTikTokらしいコンテンツジャンルが頻繁に見られた時期だ。この頃はまた「眼福系」と呼ばれる美女美男がTikTokのメインプレイヤーだった――スクールカーストの上位で、なんのてらいも嫌味も感じさせず自己顕示的な表現をみんなに見せられるような若者たち。調査をしていても、この時期に形成されたTikTokのイメージをいまでも持っている人はかなり多いと感じる。

そこから、いわゆるみんなが見てしまう「3B:Beauty,Beast,Baby(美男美女、動物、赤ちゃん)」へと広がっていく。

「お笑い」「弾き語り」動画はよりクリエイティブに

そして、「」の時期(図表2)には、クリエイティブな動画がよく見られるようになっていった。Vineを思い出させるようなWowを感じさせるアイデア動画である。加工の手法としても、「ダンス」、「トランジション(映像の切り替え)」、「エフェクト(スタンプやフィルターを活用した加工)」などが駆使されていたが、これらはショートムービーならではの特徴と照らし合わせると腑に落ちる。

つまり、ダンスのように動きを活かすもの、トランジションのようにスマホの回転などと合わせて一瞬で映像を切り替える時間操作系のもの、エフェクトのように対象に変化や装飾をもたらすものが該当する。対象物、その移動、そして時間展開それぞれをいじるわけだ。

2019年以降はリップシンクやダンスといった身体的表現の延長としての歌や音楽も見られるようになってきた。部屋で弾き語りをしたり、カラオケで歌っているのをシェアしたりと幅広さが出てきていた。

当時流行っていた「全力○○(笑顔や変顔など)」といったいわゆるお題系も、お笑い・エンタメのジャンルに含まれるだろう。「お笑い・エンタメ」にもさまざまな切り口が存在するが、筆者が好きなのが「あるある系」で、「ショップ店員あるある」や「女子高生あるある」、「マッチョあるある」など、自分の仕事や趣味に基づいている場合が多い。自分だけが知る新鮮な切り口でもあり、さらにキャラ立ちを活かしたものだとも言える。