インフルエンサーが「TikTokは他とは違う」と話す理由

金丸雄一氏が代表を務めるN.D.Promotionに所属する莉子さん(2002年12月生まれ)は、TikTokerとして著名だ。

莉子さん(写真提供=N.D.Promotion)

いまやTikTokの枠にとどまらない活躍をしていて、雑誌・Popteen専属モデルを務めるほか、ABEMAの恋愛リアリティショー(通称「レンリア」)「月とオオカミちゃんには騙されない」にも出演。2020年にはファストファッションブランドとして世界的に展開するH&Mの「H&M Divided」グローバルアンバサダーにも選ばれている。

さらには「好きな女性インフルエンサー」ランキング1位(2020年4月マイナビティーンズ調べ)、「JC・JK流行語大賞」2020年上半期ヒト部門2位(2020年6月JCJK調査隊調べ 株式会社AMF)に選出されるなど、TikTok内での人気が他のメディアでの露出や展開に波及していった。

筆者が莉子さんに話をうかがったインタビュー(2019年12月5日実施)の中では、TikTokについて下記のような印象的な言葉を聞くことができた。

・TikTokで動画を投稿したら、そのタイミングで自身のインスタグラムやツイッターで告知して見てもらうようにしている。ファンはどれだけ速く見られるかを競うように、その速さをコメントする傾向もあるほど(いいねの回数が1K=1000回に達する前にコメントできたら鼻高々など)。
・TikTokでは他のSNSに比べて新規の若いファンが付きやすい。
・TikTokで発信するメリットのひとつは、素のコメントがもらえること。良いものも悪いものも含めて。ストレートにポジティブなこともネガティブなことも言われるという意味で、リアリティがある。発信する側にとっては貴重な意見だと感じる。
・他のSNSに比べて、TikTokにはバズることの実感がある。自分はほぼ素人の状態から始めたのに、多くのファンに見てもらえる状態になった。他のSNSはフォロワー数などで差がついているとやる前から目に見えているところが多いが、TikTokは何が起こるか予想できないし、「希望が多い」。

「持たざるもの」がスターになるための足掛かりに

最後の莉子さんのコメントにもあったように、TikTokは持たざるもの(スターター)に優しい性質を持つ。そしてここを起点にさまざまなSNSを使い分けるのが現代のインフルエンサー術だ。

莉子さんのようにツイッターやインスタグラムをTikTokへの動線としても活用することもできるし、TikTokを起点として新しいファンに知ってもらい、他のSNSやメディアへファンを誘導することもできる。

「詳しい情報はユーチューブを見てください」といったかたちで、あるいは変身メイクの早送りをTikTokで投稿し、詳しいメイクの解説はユーチューブに載せるといったかたちで、使い分けと誘導を行うケースも増えている。

多くの人に見てもらうためのレコメンドをAIが助けてくれる、スターターにとって優しいTikTokという場で、例えば「メイクの人」と認知してもらえれば、他のSNS上も含めて存在感を高めやすくなるのは間違いない。新しい才能やトレンド・ムーブメントが生まれてくる場なのだ。