「タグる」シフトの裏には何が…
では、なぜいまググることからタグることへのシフトが広まり始めているのか。ここではその理由として中心的なものを挙げてみよう。
①情報源としての信頼性:先述の調査でも、SNS上で最も信頼する情報発信者は「友人/知人」であるという結果が得られた。企業やブランド、インフルエンサーといった重要な発信者を差し置いてのこの結果は、この情報洪水の時代において、身の回りの人々がシェアしているものに頼ろうというユーザーの心理が強くなっていることを指し示している。
②リアルタイム性:SNSは情報発信のハードルが低いため、ウェブサイトに比べて、更新頻度が高く、常に新しい情報が湯水のように湧いて出てくる。リアルタイム性、即時性、速さ……それらは、情報の鮮度を求める現代生活者のニーズに沿っている。
③スクリーンのサイズ最適性:スマホがコミュニケーションの中心になったことで、情報の最適単位がウェブサイト(ページ)から、SNS上のポストへ移ったという仮説も立てられる。ずっとスクロールしていって、最後まで見なければ情報が完結しないというのは、いまのユーザーにとっては「負担」になってしまう。そのようなUX(ユーザーの体感)の視点からもググるからタグるへのシフトを導くことができる。
知人友人だけじゃない…「ハッシュタグ」でつながる世界
なお、そもそもハッシュタグとはツイッター発祥の機能である。エンジニアたちが使っていた機能を援用したもので、フォローしているかどうかに関係なく、あるひとつのテーマについてみんなの意見が読める楽しさを引き出す機能だ。
初めて触れたとき、筆者は「これぞソーシャルネットワークだ!」と興奮したものだった。自分が既につながっている相手かどうかに関係なく、世の中の声が届くこと。筆者はその外部に接続できることにSNSのソーシャル性を見るが――見知った人の発信しか見えないのは、社会的(Social)というよりも、世間(Seken)的なのだ――、大事なことはこのような誤配の可能性こそが、タグることの実践には宿っているということなのである。
広告の世界でも、これまではテレビコマーシャルの最後に「○○○で検索(カチッ)」という検索画面とナレーションが入ることが多かったのが、ここ数年は、最後に「#○○○(作品名など)」といったハッシュタグ検索を促すようなタイプが増えている。
統合コミュニケーションの設計においても、SNSで情報発信をしてもらい、ユーザー間でタグるのがあてにされているとわかる。